Q「オリーブアナアキゾウムシに開けられた穴が沢山」どうすれば?
(2021年7月2日更新/分かりにくい部分を動画にしました)
「10年前に家のシンボルツリーとして植えたオリーブに30個以上の穴が空いていました。どうしたらいいですか?」というコメントをブログにいただきました。同じような質問をいただくことがあるので、農薬を使わない場合の基本的な対処方法を書いてみます。
こんな感じの穴が30個以上空いていたそうです。
それ以外の情報を箇条書きにするとこんな感じになります。
- 根元を見てみると、穴とおがくずのようなものがありました。
- 成虫も10匹以上見つけて捕獲しました。
- 穴の位置は根元だけでなく1.5m以上の高さの所にも開いており、成虫も結構高い場所にいました。
- 少し元気がない感じもしますが、弱っているという感じはしません。根元から新しい枝も出てきています。
- 駄目元で書いてらっしゃるようにマイナスドライバーを使ってやってみようと思います。
- 幼虫を見つけるために、穴が開いているところは全て削った方が良いのでしょうか。それとも穴とおがくずの様なものがあるところだけ削れば良いのでしょうか?
- オリーブの下に下草はなく、小さな白色の化粧石を置いてあります。
- 再生できるかどうか分かりませんが、出来れば薬剤を使わずに何とか枯らさずこのまま育ててあげたいと思っています。アドバイスを頂けたら幸いです。
- オリーブの木の花壇から1mくらい離れた場所に、同じ様な花壇の中にオリーブよりかなり背の高いシマトネリコが植わっています。オリーブアナアキゾウムシはシマトネリコにも害を及ぼすようなことはあるのでしょうか?
1)すぐにやること
2)今後のためにやること
3)1年単位でやること
3段階に分けて説明したいと思います。
1)すぐにやること
もうすでに実行されているようですが、やることは3つあります。
①オガクズ状の糞が出ているところにいる幼虫をマイナスドライバーで掻き出します。
実際にゾウムシの幼虫をマイナスドライバーで捕獲している動画です。まずオガクズが出ている一番上あたりにあるオガクズの出口をドライバーで押さえながら見つける。次に穴を空けて幼虫が木を食い進んでいった方向に穴を広げていき穴の一番奥にいる幼虫を掻きだします。
②一通り掻き出したらオガクズ状の糞を掃除します。全部掻き出せてないことや、そもそも糞がまだ出ていない幼虫もいるので、新しく出てきた糞を発見しやすくするため、古い糞はきれいに片づけてしまいます。
③成虫を捕獲します。
ゾウムシが居る場所には偏りがあります。1番、多くて見つけやすいのは木の根元。2番目は地面から1m以内にある木の又や支柱の接合部、3番目は地面に近い横に伸びた枝。
赤い①;成虫を最も見つけやすい木の根元
赤い②;成虫が最も多く留まっている下枝の底
とにかく目を皿のようにして探します。
しかし、この問い合わせいただいた人のオリーブは5mくらいと上の方にいるゾウムシを見つけるのが難しい縦長の樹形です。
その他、成虫を捕獲するいくつかの裏技です。
この写真のオリーブはゾウムシに食害されて弱っていたものを畑ごと引き継ぎました。慢性的にゾウムシに食害されて木が弱っています。しかし、高い確率でゾウムシがいるので、ときおりこの方法を使います。オリーブの木の下にできるだけ大きい傘をひっくり返して置きます。そして、コンコンコンと幹を叩くように揺すります。オリーブアナアキゾウムシは人間が近づく振動で枝からポロリと落ちて死んだふりをする性質を利用した方法です。この方法なら高いところにいるゾウムシも傘に落とすことができます。傘がない場合は、レジャーシートのようなものでも構いません。落ちてきたものがゾウムシと見分けやすければそれでOKです。
「幼虫を見つけるために、穴が開いているところは全て削った方が良いのでしょうか。それとも穴とおがくずの様なものがあるところだけ削れば良いのでしょうか?」
この質問への答えは穴が空いたところは何もしません。穴が空いているということは、幼虫が成虫に羽化して出て行ったことを意味しています。つまり、穴の中には、もう幼虫はいないので、掘っても何も出てきません。ちなみに、穴が空いたままでも、穴をドライバーで広げてきれいにしても、木のダメージは同じです。見た目を考えるなら削らないでそのままにしておいた方が見栄えはいいかもしれません。とにかくオガクズ状の糞が出ている所だけを徹底して削り幼虫を見つけ出して捕殺します。
2)今後のためにやること
3つあります。
①オリーブの根元をすっきりさせます。
現状の写真は、雑草などもなく、よく手入れがされていますが、大小の石の陰にゾウムシが隠れやすくなっています。また、木の上の方から落ちてくるオガクズも気づきにくいとも言えます。できれば石は片づけて土が見える状態がベストです。
②支柱の結束部分をすっきりさせます。
支柱と幹を結んでいるシュロ縄の左上あたりにオガクズが付着しているので、シュロ縄の下あたりにまだ幼虫がいるかもしれません。このような縄で樹皮を覆うと中に幼虫が潜り込んだり、成虫の隠れ場所になりやすいので、この縄は取ってしまいます。替わりはビニールハウスなどで使用する平たいハウスバンドなどが食い込みにくく、虫が隠れにくいのでおすすめです。
③定期的にチェックする。
うちの畑では毎朝500本のオリーブを全て見て回って、オガクズが落ちていないか、成虫はいないかチェックしています。少なくとも今年の秋くらいまでは幼虫が残っている可能性が高いので、できれば1日1回、少なくとも1週間に1回はチェックしましょう。また一度、オリーブアナアキゾウムシがいた木は集合フェロモンによって、他のところのゾウムシを呼ぶので、いったんいなくなっても、またやってくることがあります。定期的な見回りはぜひ習慣化してください。
3)1年単位でやること
30ヵ所以上食害されているので、これから木が弱ってくる可能性があります。葉色が悪くなり、落葉が始まっても、いったん何もせず見守っていてください。冬に入ると木の活性が落ち、元気がなくなるかもしれませんがオリーブは案外タフです。枝が茶色く枯れたら、その枝は落とすくらいで構いません。春になると幹さえ生きていれば新芽が吹きなおします。
ただし、ゾウムシの食害とは関係ありませんが、オリーブの樹形をそろそろ整える強剪定をしてもいいタイミングのように見えます。1階の窓の上の方の葉が元気で、その下の葉に光が当たらず弱っていくことがあります。つまり頭でっかちの樹形になってしまうので、来年の春先あたりに、1階の窓の上当たりまで切り戻すのも手です。ちなみに、僕たちのような実を収穫する農家は、このような樹形になる前に必ず強剪定で切り戻します。
最後に
「オリーブの木の花壇から1mくらい離れた場所に、同じ様な花壇の中にオリーブよりかなり背の高いシマトネリコが植わっています。オリーブアナアキゾウムシはシマトネリコにも害を及ぼすようなことはあるのでしょうか?」
シマトネリコはモクセイ科の樹木なのでオリーブアナアキゾウムシも食害します。なので、ゾウムシに食われていないかチェックしてください。ただし、うちの庭にもオリーブの横にジマトネリコが植わっていますが、オリーブは食われてもシマトネリコが食われたことはありません。オリーブアナアキゾウムシはシマトネリコよりオリーブの方が好きなのかもしれません。実際は分かりませんが。
いきなり全部でなくても構いません。少しずつできる範囲で、ときおりオリーブの木に話しかける感じで見てやってください。木は話しかけられるのが好きなような気がします。僕の場合は、オリーブの木に話しかけることより、ゾウムシに話しかける方は多いかもしれません。虫の方がより気持ちが分かるので。
健闘とオリーブとの楽しい毎日を、瀬戸内の小さな島から祈っています。
【関連動画】
□
文と写真 山田典章
オリーブ専業農家。香川県小豆島の山田オリーブ園園主。1967年佐賀県生まれ。岡山大学農学部を卒業後、会社員時代の約20年間に保育園事業などの6つの事業に携わる。2010年に小豆島に移住し、子どものときに好きだった虫捕りが毎日できる有機オリーブ農家になる。好きなものは虫と本と日本酒。オリーブ栽培としては初の有機JASに認定される。山田オリーブ園ではオリーブや柑橘類の栽培、加工、販売を行う。
著書 これならできるオリーブ栽培 ~有機栽培・自家搾油・直売~
(出版社コメント)
オリーブをうまく育てるには? 経営として成り立たせるには? ~栽培から自家搾油、販売まで著者の経験を詳しく解説!~
手間いらずで儲かる新品目として注目されるオリーブ。しかし、「木が枯れてしまった」「何年たっても実がならない」「オイルの搾り方がよくわからない」といった声も。
本書では、脱サラで新規就農し、日本で初めてオリーブ栽培の有機JASを取得した著者が、確実に実をならせるための栽培のコツや病害虫対策、小規模な自家搾油所の作り方と搾油方法、ネット通販などのノウハウを丁寧に解説。
とくに、日本のオリーブ栽培で最大の難関となるオリーブアナアキゾウムシ対策は必見。昆虫少年だった著者が観察と実験を繰り返して、明らかにしたその生態をもとに、農薬を使わなくても、効率よく確実に被害を防ぐ方法を紹介。
まだ木が小さく実の収量が少ない時期の貴重な収入源になるオリーブ茶の作り方や、苛性ソーダを使わない安全な実のアク抜き法、ワイン漬けなどのおいしい実の加工品の作り方も多数紹介。
これからオリーブを栽培したい人、すでに栽培している人にも、ぜひおすすめの一冊。
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初めまして。検索から辿り着きました。我が家の玄関先に植えたシンボルツリーのオリーブの木(2階まで届く高さ)が気付いた時にはアナアキゾウムシの穴が多数あり、全ての葉が落ちてしまい見た目は完全に枯れてしまった状態です。記憶が曖昧ですがもう1年以上は葉をつけていないし新芽も出ていません。このまま根元から伐採するしかないのかなあと迷っています。もし何か対策があれば教えていただきたいです。
1年以上新芽が出てきていないとすれば枯れていると思います。
初めまして。
我が家のオリーブの木がアナアキゾウムシにやられてしまいました。背丈は5mくらいあります。
今年は葉がいつもより少ないなぁと思いながら(落葉あり)、実をつけているものの枯れ枝も所々にあり(今年は猛暑で雨も少なくそのせいかと思っていました)が、下から30cm程のところに複数の穴があったのでゾウムシの幼虫を掻き出し、成虫も見つければ駆除しています。
今からでもスミチオンなど散布した方がいいでしょうか?
また、剥いてしまった皮の部分にトップジンペースドなどを塗った方がいいのでしょーか?
枯れ枝は剪定してもいいですか?
オリーブの木がとても可哀想で何とかしてあげたくて、アドバイスよろしくお願い致します。
金子さん こんにちはオリーブ大変でしたね。ゾウムシは他のゾウムシを呼ぶので農薬今からでも使っておいた方がより安心かと思います。また幼虫などもまだ残っている可能性があるのでオガクズ状の糞がこれからも出ていないか頻度高くチェックしてみてください。トップジンなどは不要です。糞が詰まってしまう可能性もあるので塗らない方がいいかもしれません。枯れ枝は剪定してもいいです。
初めてコメントいたします。
我が家のオリーブも以前ゾウムシの被害にあい、それ以来、木をチェックするようになったり、防虫剤をまいたらして管理してきました。が、幹をゆらしたらかなりグラつくので、根元の土を少しほってみたところ、虫の害なのか、根っこがボソボソと崩れてきます。しかし、土から上は元気で、葉っぱもどんどん芽吹いてきます。根っこを再生する方法はありませんか?
12年間大事に育ててきたオリーブなのでどうにか抜かずに育ててあげたいです。(5本中2本がこのような状態です)
お忙しいとは存じますが、アドバイスよろしくお願い致します。
木の全体と根元、根の状態が分かる写真を下記アドレス宛に送ってください。見てみます。
yamada@organic-olive.com