オリーブ畑にマルチを使ってみた~防草とオイルの質への効果~
畑一面に次々と生えてくる雑草を春夏秋と抜き続ける。
オリーブの根元は手で抜き、周辺は草刈り機で刈り、まっすぐな畝間は耕運機を使ったり色々するが、要は草を抜いたり刈ったりし続ける。
たまたま先日、テレビ番組で桃の栽培農家が、この銀マルチを使い桃に光を当てて赤く染めていたのを見た。
それから、ボチボチ調べていたが、使って意味があるのかどうかいまひとつ分からなかった。
なので、ダメ元で試してみることに。
マルチという農業資材は、通常、野菜などの根を覆い地温を安定させたり、有機資材を撒いた上にかけることで発酵させるために使うのが一般的とされている。
オリーブ畑で使って効果が期待できることは3つ。
- 畝の間の雑草を抑制する。
- 銀色は虫が嫌うらしい。防虫の効果。
- オリーブは光が大好き。照り返しで光の総量を上げて成長を促進したい。
これらの効果が現れるのかということが知りたい。
そして、実際の使い勝手が知りたい。主に3つ。
- 風への耐性
- 雨への耐性
- 踏まれることへの耐性
なんにせよ、頭で考えるよりも、やってみると、いろんなことが分かるはず。
秋、妙見さんの北の畑にマルチを試してみる。
銀黒マルチを畝の間に敷いてみる。残りは明日。
散歩中のおじさんに「なんじゃ そりゃ 歩きやすそうな道やの」と言われる。
(2011.4.7記事)
半年後の春。
昨年の秋に、上の畑に敷いた銀色のマルチシートを撤収することにした。
草刈りの手間を少しでも省きたいというのが主目的で、マルチシートを畝の間に敷いたが、敷いてない部分の草を刈るときに、半分ずつ刈払機の刃に当たらないように、ずらさないといけない。
が、その作業が結構、重労働。
風で飛ばないように置いてある石と鉄棒を腰を曲げて、どけては戻しが、しんどくて草刈りがメンドクサクなってしまう。
どけては戻しの労働力より、耕運機を掛けた方が早い。
ということでオリーブ畑でマルチシートを使う場合は、畑全面を覆ってしまわないといけないということが身を持って分かった。
根元の盛り土が高いこともあり、全面を覆うことは難しいし、防虫や成長促進などの効果も見込めそうにないので、一旦マルチは失敗として撤退。
(2013.1.30記事)
更に1年半後の冬。
数年前にビニールマルチで樹間を覆ったことがあった。
主に雑草の抑制が目的だったが、半年くらい使ってみて、結構管理に手間が掛かるのと木の成長に影響が出始めたので早々に止めてしまった。
しかし、それ以来、ポリやビニール等の石油製品で作られたマルチ(畑の地表を覆うシート)がオリーブに与える影響が気になっている。
僕がマルチを試した3年ほど前から、ずっとマルチを使っている人様の畑が何ヶ所かあるので、たまに眺めに行くのだが、ほぼ分かってきたことがある。
人様の畑なので写真は掲載できないが、マルチを使うと木の成長が著しく阻害される、ということ。
樹高1メートルほどの3年生の木を植えて3年間経つと、マルチを使っていない普通の畑では、3メートルから4メートルくらいの成木になるのだが、マルチを使っている畑は、1メートルから2メートル程度で成長が止まっている。
傾向としては、枝の広がりが、マルチの穴が開いたところで、ほぼストップしているように見える。
つまり、根がマルチの下まで伸びていくことができていないと推測される。
ポリ製のマルチといっても繊維を編んだものなので若干は水も空気も通すのだが、土は死んでいるように見えるといったら言い過ぎだろうか。
雨が降った後は、べたべたになるし、乾燥しているときはカピカピなのである。
このあたりは想像なのだが、ポリマルチは土の呼吸を止めてしまい、土の中にいる菌類や微生物、小さな昆虫類を極端に減らしてしまっているのではないだろうか。
ただし、農薬や除草剤を多用すると同様に土中の生き物たちを殺してしまうが、マルチを使ったときのように木の成長が止まるということはない。
なので、微生物の量だけが主たる理由ではなく、水分や温度、空気、光などの要素と合わせて考えていく必要があると思う。
有機栽培では結構、使われている農業資材だが、このマルチという方法は問題があるし、その問題が何かを考えていくことに、オリーブ栽培の大きなヒントが隠れているような気がしてならない。 というこを考えた日でした。
(2018.9.2記事)
マルチを植えてから8年後の秋。
マルチの失敗から8年。あの後、雑草を抑えるためにカバープランツのテストを始める。10種類以上の芝やシロツメクサなど雑草を抑えることで草刈りの作業を軽減しようというアイデア。
あの妙見さんの北の畑はこうなる。
しかし、この芝で覆われた一見美しいオリーブ畑にも問題が起こってくる。
そして2018年の妙見さんの畑はこうなっている。
芝は取ってしまい、もともと小豆島に勝手に生えていた雑草をそのまま生やしている。
マルチの頃、雑草と呼んでいた草花が8年後には大切な宝となった。この草生栽培のことと、そこに至るカバープランツのことは別に書きたい。
□
文と写真 山田典章
オリーブ専業農家。香川県小豆島の山田オリーブ園園主。1967年佐賀県生まれ。岡山大学農学部を卒業後、会社員時代の約20年間に保育園事業などの6つの事業に携わる。2010年に小豆島に移住し、子どものときに好きだった虫捕りが毎日できる有機オリーブ農家になる。好きなものは虫と本と日本酒。オリーブ栽培としては初の有機JASに認定される。山田オリーブ園ではオリーブや柑橘類の栽培、加工、販売を行う。
著書 これならできるオリーブ栽培 ~有機栽培・自家搾油・直売~
(出版社コメント)
オリーブをうまく育てるには? 経営として成り立たせるには? ~栽培から自家搾油、販売まで著者の経験を詳しく解説!~
手間いらずで儲かる新品目として注目されるオリーブ。しかし、「木が枯れてしまった」「何年たっても実がならない」「オイルの搾り方がよくわからない」といった声も。
本書では、脱サラで新規就農し、日本で初めてオリーブ栽培の有機JASを取得した著者が、確実に実をならせるための栽培のコツや病害虫対策、小規模な自家搾油所の作り方と搾油方法、ネット通販などのノウハウを丁寧に解説。
とくに、日本のオリーブ栽培で最大の難関となるオリーブアナアキゾウムシ対策は必見。昆虫少年だった著者が観察と実験を繰り返して、明らかにしたその生態をもとに、農薬を使わなくても、効率よく確実に被害を防ぐ方法を紹介。
まだ木が小さく実の収量が少ない時期の貴重な収入源になるオリーブ茶の作り方や、苛性ソーダを使わない安全な実のアク抜き法、ワイン漬けなどのおいしい実の加工品の作り方も多数紹介。
これからオリーブを栽培したい人、すでに栽培している人にも、ぜひおすすめの一冊。
有機オリーブ研究所 関連記事
【オリーブ栽培】
オリーブの実を収穫したい人のための苗木の選び方&品種の見分け方
オリーブの種を蒔いて世界でただ1つだけの品種のオリーブを育ててみよう!
オリーブ農家が実践するオリーブの病気対策・炭疽病・梢枯病・がんしゅ病・立枯病
小豆島の有機オリーブ農家がおススメするオリーブのコンパニオンプランツ
オリーブ農家が実践する風に弱いオリーブを支える支柱の立て方実践編
世界のオリーブ生産地の年間降雨日より「オリーブに冬の水やりは必要か?」
【オリーブの害虫研究】
2020年最新オリーブアナアキゾウムシの捕まえ方~フィッシング法~
1000分の1シルバーオリーブアナアキゾウムシを見落としてしまう脳問題
Q「オリーブアナアキゾウムシに開けられた穴が沢山」どうすれば?
【オリーブオイル】
【お茶・オリーブ加工品】
国内では唯一の有機オリーブ葉のみを使用した健康茶7つのこだわり
【その他】
初めまして。
反射マルチの効果について調べてましたが、オリーブには良くない影響があるようですね。当方関東地方在住で日照時間をカバーするためオリーブにマルチを使うのはどうか?と考えてみましたが…
土壌中の酸素が足りなくなってしまうんですかね
ベストな方法を探してる所でした。
貴重な情報、ありがとうございます。
はじめまして。
小豆島では雑草の抑制を目的に試験的にマルチカバーを使っている農家さんたちがいましたが、ほぼ全て生育不良を起こし最近ではほとんど見かけることがなくなりました。ただし、オリーブにとっては降雨量が多すぎる日本の気象環境でマルチを効果的に使う方法があるかもしれません。まだ、良い方法が見つかっていませんが、何らかの可能性はあると思っています。