オリーブ農家になるために必要な道具トップ10
小豆島に移住してオリーブ農家になってそろそろ9年目。オリーブを育てるために色んな道具を買っては失敗を繰り返してきました。そこで、どうしても必要な道具は何だったのかを振り返りつつ、選び方のポイントも紹介します。
農家でなくてもオリーブを自宅で栽培されている人にも1位の軽トラ以外は参考になります。柑橘類などの果樹農家を始めてみようという人も参考にしてください。
数百本~数千本のオリーブを育てるオリーブ農家にとって必要なプロ仕様の道具トップ10です。ちなみに順位は重要度順ですが、10位の三脚でも実が生って収穫が始まれば必ず必要です。
番外編
1位 軽トラ
基本、苗木や脚立、草刈り機、一輪車など、土が付いている大きな道具を毎日運びます。
ワゴンタイプのものでも代用はできますが農家にとっては無くてはならない道具、軽トラがベスト1です。
ちなみに、メーカーはどこでもいいし、新車でも中古車でもいいですが4輪駆動の機能はあった方が便利です。うちはパートタイム4駆です。雨の日に、ぬかるんだ畑に入るような場面が度々あります。
また軽トラは基本マニュアル車が多いですがオートマでも問題ないと思います。
中古車の場合はマニュアルが多いようです。マニュアルは必須ではありませんが、乗れたら安めの中古車が買えます。ただし、夫婦で農業をやる場合、どちらかがマニュアルが苦手な場合はオートマにした方が無難です。
2位 草刈り機(刈払い機)
オリーブ農家の作業の8割は草を刈ることです。
ちなみにうちは草生栽培で畑に草を生やしていますが、それでも冬以外は1ヶ月に1回以上草を刈ります。
刃はチップソー、ナイロンコードは最低限必要で、もう1つ石が多い畑で使える2~4枚刃タイプの常時3台の草刈り機があります。刃は便利そうな色んなタイプのものを試してきましたが、使い物になるものは、ほとんどありませんでした。ダメな商品を列記したいぐらいですがメーカーさんがかわいそうなので、やめておきます。でも詐欺まがいのなんちゃって商品が多い業界です。
普通に使うなら、あまり安物ではないチップソー。オリーブの木の回りや石垣の際などはナイロンコード、石が混じっている畑で短めに草を刈りこむときはチップが付いていない刃といった使い分けをしています。
ちなみに、あまりにも酷使するせいか、2年に1台くらいの頻度で壊れて買い換えています。ネットで買うと修理の依頼が面倒なことが多いので、最近はホームセンターで買って保証期間は壊れたら修理してもらうようにしています。
軽い方が疲れないのですが、エンジンの排気量はナイロンコードも使えるように26cc以上にしています。
顔とメガネの間にスキマがない防護メガネは必須です。スノボやるときみたいな覆うタイプを使わないと、思わぬ角度から小石が目に直撃することがあります。農作業中のうっかり事故で一番危なく感じるのは、この草刈り機から砂や石が飛んでくることです。ちなみに、畑仕事中もっともブルーな気持ちになるワーストワンは、うっかり草の中にある犬の糞をナイロンコードで四散させたとき。体中に細かいものが付着して、犬ではなく飼い主に対する悪い気持ちが蓄積されます。
3位 シャベル(スコップ)
オリーブを植えるときや移植のときには必要です。溝も掘りますし、穴も掘ります。
僕は金象印「根切りしやすい植木ショベル」という刃先がまっすぐなタイプのものを使っています。(右のもの)
刃先が尖った普通のシャベルより、先がまっすぐなので土への食い込みが安定して断然楽です。
大きすぎるものより小ぶりなものの方が長時間作業ができます。
ちなみに、数百本の苗木をを植えたり、成木の移植や田んぼの土壌改良などになると、シャベルでは太刀打ちできません。油圧ショベル、いわゆるユンボを使います。人間がシャベルで1日掛けて掘る穴をユンボは5分でやってしまいます。購入せずにレンタルが便利です。
※ユンボを使用するためには車両系建機運転技能講習を修了が義務付けられており、公道を走らせる場合には「大型特殊免許」が必要。
4位 手押し車(ネコ車・一輪車)
色んな呼び名がありますが、うちではたんに「ねこ」と呼んでいます。
苗木や土を運びます。結構重いものを運ぶことが多いので、ネコがないと腰がもちません。
バケツ部分は浅くて大きめのもの(写真左)より、深くて小さめのもの(写真右)の方が重心が低く安定しやすいので使いやすいです。
ネコはシャベル同様、大は小を兼ねません。
それとタイヤを付け替えるとき発泡剤のようなものが詰められているパンクしないタイヤが売られていますが、重くなるのと圧が硬すぎてガタガタするので普通のタイヤが断然使いやすいです。
うちの右のネコは既に20年近く使われているせいで底が錆びて少し穴が空いています。そのまま外に置いていても水が抜けるので錆が広がらない優れものです。
長く使うためには、数年に一度ペンキを塗り替えてやりましょう。愛着が湧いてきます。
5位 剪定鋏
オリーブの枝を切るときに割と頻繁に使います。一番頻繁に使うのは、写真の真ん中の剪定鋏。畑を見回るときも腰に差して、ゾウムシを見つけるついでに要らない枝を落とすのに使います。
写真左のラチェット式太枝切鋏は1つあるととても便利です。太めの枝でもバサバサ落とせます。高くてノコギリが使えないようなところも、このラチェット式なら何度かに分けて食い込ませることで、相当太い枝でも落とせます。
右の小さいのはいわゆる摘果鋏です。普通の剪定鋏が入らないような細いところにも届きます。オリーブの盆栽作りやオリーブ茶作りなど剪定鋏より細かい作業に向いています。これは1つあると便利です。
ちなみにホームセンターや園芸店に行くと、同じように見えるけど値段が全く違う剪定鋏が置いてありますが、使い勝手や耐久性など値段通りです。迷うようなら3千円くらいの岡恒の剪定鋏で間違いありません。鋏ほど値段相応な商品はあまりありません。しかし、消耗品なのであまり高いものは必要ありません。
木の汁や灰汁はお湯で洗うだけできれいに落ちます。たまには油を注ささないと道具に申し訳ないですね。
6位 ノコギリ
木が大きくなると、剪定に剪定鋏を使うことは、ほとんどなくなります。
3m以上の成木の枝を1本1本ハサミで切っている時間もないし、効果もさほどないので、基本的にはノコギリで枝ごと落とすことになります。
ノコギリも色々試しましたが、普通の枝切ノコギリもしくは写真の竹用のノコギリを使うことが多いです。
三脚の上で使うこともあるので、コンパクトであることが第一。
また三脚の上で遠いところを落とすときに手で枝を支えなくても、竹用は小さく動かせば、刃が細かいので枝を落とせる便利さが気に入っています。
海外のオリーブ農園では高枝ノコギリが主流のようです。いちいち三脚に登らなくていいのは魅力なので、うちでもそろそろ高枝ノコギリを導入しようと思います。
7位 長靴
畑で履く靴は本当に迷います。実はいまだに迷い続けています。
しかし、結局、長靴を履いている時間が一番長い。午前中などは草が生えている畑に入る場合、夜露に濡れているので長靴一択です。
また、畑で一番怖い生き物はマムシです。草むらに入るときには、ある程度上までカバーされているブーツか長靴じゃないと怖いことがあります。
しっかりした作りのブーツに比べると、滑りやすくて靴底が薄いなどの弱点はありますが、水に強い長靴を履いてしまいます。
夏場などは蒸れるので、休憩たびに脱いで乾燥させるなど面倒です。
耐久性、耐水性があって蒸れない長靴があったら欲しいのですが今のところ出会ったことがありません。
ちなみに黒は夏場すごく厚くなるので色は薄めがおすすめです。
8位 手袋
布製の軍手は濡れて、すぐに泥だらけになるので毎日洗う手間が掛かり面倒です。
手のひらはゴム、手の甲は布製のゴム手袋がベスト。
しかし、このゴム手袋の質は全く商品によって違います。島にあるホームセンターに売っているゴム手袋3種類くらいありますが、数か月しかもちません。すぐに破れます。
ネット通販で売っている「カエルの手」という商品がこれまでのところダントツタフで使いやすいです。
9位 ハンマー
正式名称は「石頭鎚」もしくは「両口ハンマー」といった1kg前後の重くて頑丈な金槌のことです。
これで、支柱を打ち込みます。
木の杭や竹を打ち込むときは木製のカケヤを使用した方がスムーズなのですが、一人で作業する場合は片手で打ち込みたいので、両手を使うカケヤではなく、片手で少しずつ打てる金属製の石頭鎚を使っています。支柱の材質は、L字鋼などの金属、イボ竹、竹、木なんでもOKです。ただし、強く打ちすぎると杭を破壊してしまうので力加減をほどほどに。
普通の金槌だと軽すぎて、支柱に跳ね返されるのである程度の重さが必要です。
10位 三脚
主にオリーブの収穫のときに使用します。
デコボコや傾斜がある畑で、足が4本ある脚立で代用すると危険です。実際、使ったことがありますが、安定が悪く非常に使いにくいです。
アルミ製で軽く、高さは1m~3.6mまでのものを使用しています。一番多用しているのは2.4mのもので樹高3m程度の木にぴったりです。
収穫に必要な道具はこの三脚・収穫袋・コンテナの3つです。
番外編 11位 搾油機
実を売るまでのオリーブ農家だったら搾油機は要りません。
実からオリーブオイルを搾る食品加工までをするとなると、どうしても搾油機が必要になります。
小豆島などのオリーブオイルの生産が盛んな地域では搾油を企業などに委託することが可能ですが、それ以外の地域では自治体や農協のバックアップなどがないと難しい問題です。
オリーブの実は収穫してから搾油までの時間を如何に短くできるかがオイルの質を左右するので、ある程度の品質のオイルを製造したい場合は自家用の搾油機を購入することになります。
搾油機は日本では製造されていないのでイタリア製のものなどを輸入することになります。搾油機と合わせてオイルを搾るための搾油室も必要になります。
番外編 12位 パソコン
栽培し搾油したオリーブオイルを自分で販売しようとすると、最もコストが掛からないのはネット販売です。
パソコンを使うことができれば、直接お客さんに商品を販売できるので6次産業化が可能になります。
ただし、手間は掛かりますので負担が大きいようであれば、卸売り会社や小売店に販売する方が効率的なこともあります。
番外編 13位 マイナスドライバー
オリーブアナアキゾウムシの捕獲に必要な道具はマイナスドライバーのみです。
細いものと少し太めのものの2種類あると便利です。
マイナスドライバーがあればオリーブ農家ではなく、有機オリーブ農家になることもできます。
□
文と写真 山田典章
オリーブ専業農家。香川県小豆島の山田オリーブ園園主。1967年佐賀県生まれ。岡山大学農学部を卒業後、会社員時代の約20年間に保育園事業などの6つの事業に携わる。2010年に小豆島に移住し、子どものときに好きだった虫捕りが毎日できる有機オリーブ農家になる。好きなものは虫と本と日本酒。オリーブ栽培としては初の有機JASに認定される。山田オリーブ園ではオリーブや柑橘類の栽培、加工、販売を行う。
著書 これならできるオリーブ栽培 ~有機栽培・自家搾油・直売~
(出版社コメント)
オリーブをうまく育てるには? 経営として成り立たせるには? ~栽培から自家搾油、販売まで著者の経験を詳しく解説!~
手間いらずで儲かる新品目として注目されるオリーブ。しかし、「木が枯れてしまった」「何年たっても実がならない」「オイルの搾り方がよくわからない」といった声も。
本書では、脱サラで新規就農し、日本で初めてオリーブ栽培の有機JASを取得した著者が、確実に実をならせるための栽培のコツや病害虫対策、小規模な自家搾油所の作り方と搾油方法、ネット通販などのノウハウを丁寧に解説。
とくに、日本のオリーブ栽培で最大の難関となるオリーブアナアキゾウムシ対策は必見。昆虫少年だった著者が観察と実験を繰り返して、明らかにしたその生態をもとに、農薬を使わなくても、効率よく確実に被害を防ぐ方法を紹介。
まだ木が小さく実の収量が少ない時期の貴重な収入源になるオリーブ茶の作り方や、苛性ソーダを使わない安全な実のアク抜き法、ワイン漬けなどのおいしい実の加工品の作り方も多数紹介。
これからオリーブを栽培したい人、すでに栽培している人にも、ぜひおすすめの一冊。
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