オリーブアナアキゾウムシの見分け方
この虫はオリーブアナアキゾウムシだろうか?という質問をされることがあるが、オリーブアナアキゾウムシではないことも多い。木の根元にオガクズ状の糞が出てきて犯人を捜してみるが、その虫がオリーブアナアキゾウムシかどうか判別がつかないということは普通にある。
そこで、これがオリーブアナアキゾウムシという写真を載せるので参考にしてください。
フリーソフト「AIメーカー」によってオリーブアナアキゾウムシか、オリーブアナアキゾウムシ以外のゾウムシか、そもそもゾウムシ以外の昆虫かを判定します。
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※フリーソフトなので100%の精度は求められませんが参考になります。
これがオリーブアナアキゾウムシ。体長はこれまで捕獲したものは最小で1cm、最大のもので2cmくらいで平均は15mm。
ゾウのような口吻が特徴の典型的なゾウムシの形。体表はゴツゴツしていて、とても小さな毛が生えており、光沢はない。模様は、こげ茶とベージュの斑模様で個体によってすべて模様が違い、オリーブの傷ついた樹皮や、地面に落ちた種、鳥の糞などと見分けがつきにくい。
体の色は黒っぽいものもいる。そもそも黒いのか環境によって変化するのかは分からないが、飼育箱で沢山飼っていると黒く変色することも。
稀に写真の上の個体のように赤いオリーブアナアキゾウムシもいる。羽化したばかりのときは赤い個体も時間が経てば普通の斑模様に変化していく。
薄暗い時間は根本の地際にメスが産卵に降りてくる。根元に草が生えて薄暗いと昼間でもいることも。
樹皮の隙間なんかは隠れやすいので大好き。
みんな集まって交尾中。オリーブアナアキゾウムシは集合フェロモンを発している(仮説)ので仲間を呼ぶ。逆に言うと縄張りは持たない。
オリーブアナアキゾウムシの集合フェロモンは糞に含まれているのか?実験
かわいいお尻が見えてるよ。昼間は、こういう幹の隙間で休んでいる。
枝に止まっているときは鼻を下に垂らすコウモリ姿勢。うかつに近づくとポトリと地面に落ちて見つけられなくなるので、そっと近づいて。
ちなみに基本的には歩いて移動する。オリーブアナアキゾウムシの歩行速度は時速30メートルくらい。
泳げない。
でも飛ぶ。ナマケモノなので滅多に飛ばないけど、やればできる。夜に飛ぶことが多いみたい。
お腹にサシが入っていればオス。お腹が真っ黒ならば概ねメス、でもオスのときもたまにある。
ちなみにオリーブアナアキゾウムシに似ていて間違いやすいゾウムシをいくつか紹介したい。
下がオリーブアナアキゾウムシ。葉っぱに乗ってる丸っこいのはオジロアシナガゾウムシ。このゾウムシはどこにでもいて斑模様が似ているので一番間違いやすい。
ヨモギが大好きなハスジカツオゾウムシ。オリーブアナアキゾウムシよりシュッとしている。
最後はこれ。右の小さいのはアシナガオニゾウムシ。エノキなどが好きらしいが森が近いと普通にいる。模様は似ているけどゾウムシの鼻の部分、口吻をびっくりすると写真みたいに折りたたんでしまう。ちなみにオリーブアナアキゾウムシの鼻は折りたためない。
【最後に】
オリーブアナアキゾウムシに似ているけどオリーブアナアキゾウムシではないゾウムシたちはオリーブを食べることはない。なので、とにかく虫全部が嫌いで見つけたら殺して回らないと気が済まないという人でなければ、ちゃんと見分けて、そっとそのままにしてやってください。ちなみにオリーブアナアキゾウムシも、うちではこれまで1匹も殺さず全部連れ帰って家で飼ってます。まだまだ分かっていない生態を知りたいし、隔離さえしておけばオリーブに悪さしないので。オリーブに普通に使われる有機リン系のスミチオンやネオニコチノイド系のダントツなどの農薬は人間にとっては便利だけど、弱点は殺す虫を選べないこと。オリーブアナアキゾウムシ1匹を殺すためにオジロアシナガゾウムシもハスジカツオゾウムシもコガネムシもカマキリやミツバチなど全部殺してしまう。害虫を見分けて1匹ずつ捕るなんて大変すぎてやってられない、という気持ちは農家だから分かるけど、これからは少しずつでも僕ら農家の考え方が変わっていったらいいなと思っています。「もう面倒だからなんでもかんでも皆殺しだ!」というのは何というか、そろそろ野蛮だと思いませんか。
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文と写真 山田典章
オリーブ専業農家。香川県小豆島の山田オリーブ園園主。1967年佐賀県生まれ。岡山大学農学部を卒業後、会社員時代の約20年間に保育園事業などの6つの事業に携わる。2010年に小豆島に移住し、子どものときに好きだった虫捕りが毎日できる有機オリーブ農家になる。好きなものは虫と本と日本酒。オリーブ栽培としては初の有機JASに認定される。山田オリーブ園ではオリーブや柑橘類の栽培、加工、販売を行う。
著書 これならできるオリーブ栽培 ~有機栽培・自家搾油・直売~
(出版社コメント)
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手間いらずで儲かる新品目として注目されるオリーブ。しかし、「木が枯れてしまった」「何年たっても実がならない」「オイルの搾り方がよくわからない」といった声も。
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とくに、日本のオリーブ栽培で最大の難関となるオリーブアナアキゾウムシ対策は必見。昆虫少年だった著者が観察と実験を繰り返して、明らかにしたその生態をもとに、農薬を使わなくても、効率よく確実に被害を防ぐ方法を紹介。
まだ木が小さく実の収量が少ない時期の貴重な収入源になるオリーブ茶の作り方や、苛性ソーダを使わない安全な実のアク抜き法、ワイン漬けなどのおいしい実の加工品の作り方も多数紹介。
これからオリーブを栽培したい人、すでに栽培している人にも、ぜひおすすめの一冊。
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