山田オリーブ園 国内で初めてオリーブの有機栽培に成功しました。

オリーブアナアキゾウムシの求愛行動の新仮説

オオゾウムシとオリーブアナアキゾウムシ

オリーブの害虫はオリーブアナアキゾウムシだが、オリーブ畑にはオリーブアナアキゾウムシ以外のゾウムシも迷い込んでくることがある。今朝、オリーブの木に止まっていたオオゾウムシを見つけたので、嬉しくなって捕獲ネットの中に入れておいた。自宅の飼育箱に移そうとするとオオゾウムシの頭にオリーブアナアキゾウムシが掴まっている。

 

うるさくて逃げようとするオオゾウムシと、離れようとしないオリーブアナアキゾウムシ。

 

なんとなく予感がしたので、飼育箱から何匹かオリーブアナアキゾウムシを取り出して小さい飼育箱にオオゾウムシと一緒に入れてみた。

オオゾウムシとオリーブアナアキゾウムシ

 

数時間後。新発見!

 

やはりというか、オリーブアナアキゾウムシはオリーブアナアキゾウムシのメスだけでなく、似たようなゾウムシでもマウントを取りにいき交尾しようとするみたい。なんだったらマウントを取られている個体が更に他の個体のマウントを取っている。

 

実は、飼育箱では普通に見られるゾウムシ団子のような現象もゾウムシ特有の性質なのかもしれない。

オリーブアナアキゾウムシ

 

 

以前から分からなかったことのヒントが見つかった気がする。

 

分からなかったこととは、オリーブアナアキゾウムシの雌雄の見分けようとすると、例外が発生する事象。

オリーブアナアキゾウムシの雌雄

マウント体制に入っている雌雄のオリーブアナアキゾウムシのうち、背中に乗っている方がオス、乗られている方がメスであろうと推測して、雌雄を見分けようとしたことがあった。

 

その結果、オスとメスでは、お腹の部分の模様が少し違うおとが分かってきた。オスは少しベージュのサシが入っている。メスはサシは無く真っ黒。

 

30体くらい見てみたら、やはりメスのお腹は真っ黒で、オスにはベージュのサシが入っているのだが、しかし、ときおり背中に乗られているオスや背中に乗っているメスの模様をした個体が現れるので、この見分け方は100%じゃないと思っていた。

 

オリーブアナアキゾウムシは相手がオスでもメスでもあまり気にせず求愛しマウントを取りにいき、交尾しようとするのかもしれない。

 

つまり、オリーブアナアキゾウムシは必ずしもオスがメスを見分けて求愛行動を取るのではなく、オスメスの区別なく求愛行動を取っている可能性がある。フェロモンも性フェロモンではなく雌雄の別がない集合フェロモンを出しているという仮説とも合致する。

 

つまり、オリーブアナアキゾウムシの性行動は、相手の性どころか、相手の分類属や種すら気にしていない可能性がある。しかし、マウントを取られる側は雌雄の別がないとしてもマウント行動を取るのはオスだけなのか、もしくはメスも取るのかそのあたりまでは、今のところは分からない。

 

先日、試してみたAIによる画像認識では、AIはオリーブアナアキゾウムシかオリーブアナアキゾウムシ以外のゾウムシかを見分けることができるのに、当のオリーブアナアキゾウムシ自身は、他のゾウムシをオリーブアナアキゾウムシとそれ以外に見分けていない。

 

オリーブアナアキゾウムシ、おおらかというべきか、適当というべきか。

 

フリーダム!オリーブアナアキゾウムシ。

 

もしかすると魚をルアーや毛鉤で釣るように、オリーブアナアキゾウムシもゾウムシルアーで釣れる可能性が出てきた。

 

深い。深すぎるぞオリーブアナアキゾウムシ。ゾウムシ研究は、まだまだ続く。

 

 

文と写真 山田典章

オリーブ専業農家。香川県小豆島の山田オリーブ園園主。1967年佐賀県生まれ。岡山大学農学部を卒業後、会社員時代の約20年間に保育園事業などの6つの事業に携わる。2010年に小豆島に移住し、子どものときに好きだった虫捕りが毎日できる有機オリーブ農家になる。好きなものは虫と本と日本酒。オリーブ栽培としては初の有機JASに認定される。山田オリーブ園ではオリーブや柑橘類の栽培、加工、販売を行う。

 

 

 

 

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