AIゾウムシハンターのイメージ
先日アップしたオリーブアナアキゾウムシの見分け方でも紹介したAIメーカーによるオリーブアナアキゾウムシ判定。
フリーソフト「AIメーカー」によってオリーブアナアキゾウムシか、オリーブアナアキゾウムシ以外のゾウムシか、そもそもゾウムシ以外の昆虫かを判定します。
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※フリーソフトなので100%の精度は求められませんが参考になります。
これに例えばこの写真を判定させてみる。
どこからどう見ても2匹のオリーブアナアキゾウムシだが、判定結果は「オリーブアナアキゾウムシである確率65%」という結果。まあそうだろう。
次は木の皮に同化して体の一部が隠れているこれ。
判定結果は「オリーブアナアキゾウムシ53%」。少し見つけにくいけど認識できるみたい。
次はもっと難しいこれ。
写真の中央の木の隙間にすっぽりはまっているオリーブアナアキゾウムシ。判定結果は「オリーブアナアキゾウムシ63%」。これすごい結果だと思う。たぶん人間が肉眼でパッと見て、ゾウムシが隠れていること、そしてそれがオリーブアナアキゾウムシであることを見分けることができる人はそんなに多くない。
ちなみにさっきの写真のゾウムシを塗りつぶして判定させてみる。
結果は「ゾウムシ以外64%」になる。つまりさっきの画像は確かにオリーブアナアキゾウムシを認識して判定していたであろうということ。
アーモンドの害虫モモチョッキリゾウムシではどうだろう。
判定結果は「オリーブアナアキゾウムシ以外75%」。ゾウムシだけどオリーブアナアキゾウムシではないと認識できている。
これはカミキリムシ。
判定結果は「ゾウムシ以外49%」と精度は低いけど正解。このゾウムシかゾウムシ以外かは形態が多様な割にサンプルデータが少ないので精度は低くなるのかも。
で、最後は誰がどう見てもオリーブアナアキゾウムシの分かりやすい写真。
判定結果は「オリーブアナアキゾウムシ以外55%」。マジ?つまりゾウムシだけどオリーブアナアキゾウムシではないという判定。人間には分からないけど、AIくんこういう間違いもする。そもそもサンプルデータの量の不足による学習不足か、フリーソフトの限界かそのあたりは分からないけど、完ぺきではない。しかし、このAIによる画像認識は、現時点で僕より精度は劣っているけど、うちの嫁さんよりは優れていて、かつ学習すればするほどどんどん賢くなる可能性があることは間違いない。
ここからが本題。
AIゾウムシハンターの開発について、ここのところ数件問い合わせをいただいているので、もう少し考えていることを書いておきたい。そもそも日本でオリーブを無農薬で育てている農家は僕が知るだけでは5軒もいない。有機認証を取得している農家が3軒と無農薬でやっている農家が数軒。なぜ、こんなに増えないのかというと、このオリーブアナアキゾウムシからオリーブを守るのに、どうしても強い農薬を使うから。でも、オリーブアナアキゾウムシを見つけることができれば農薬は必要ない。それを今は人間が、毎日、木を1本1本見回って捕まえているけど、AIロボットにさせれば誰でも有機栽培でオリーブが育てられることになる。そして、その害虫用のAIロボットは、ドローンに積んだ農薬を空中から撒くような荒々しいものではなく、とてもスマートというか賢いロボット。このAIロボットは、オリーブアナアキゾウムシのように発生数が少なく、動きが少なく同じ場所に留まるような害虫にも汎用性がある。
人間である僕がオリーブアナアキゾウムシ対策でやっているプロセスはこの3つだけ。
1)畑に入る木を1本ずつ見てゾウムシの成虫と幼虫のサインを判別する。
2)幼虫がいれば掻き出す。
3)成虫がいれば捕獲する。
で、AIゾウムシハンターにやってもらいたいのは「1)畑に入る木を1本ずつ見てゾウムシの成虫と幼虫のサインを判別する」だけ。大変でスキルが必要なのはこの発見~判別だけで、2)3)の捕獲はロボットに複雑な動きをさせるより、人間がやった方が当面は手っ取り早い。イメージとしては猟犬に近く、獲物を追い、発見し、「ここにシカがいるぞ!」と吠えて、止めは猟師に任せる。
ドローンもしくはラジコン車のような形状のロボットが、畑の中の雨が凌げる待機場所にいて、電気もしくはガソリンで稼働し、予め設定した時間になると自動的に起動し、決められたコースを周回しながら木の映像を撮影し、その映像の中にオリーブアナアキゾウムシの成虫もしくは幼虫のサイン(オガクズ状の糞)が検知されれば、その木の映像もしくは木の個体番号を送信するというのが僕が開発したいAIゾウムシハンターのイメージ。できるだけ実戦的なものがいいので、ロボットはカメラとそのデータを送信する機能だけがあれば、画像解析はデータを受信したパソコン側でやった方がいいかもしれない。過酷な自然環境下を移動するAIロボットの体部分はできるだけシンプルでタフなものにして、学習機能がある頭脳はパソコンが担い、ゾウムシを捕まえるような細かい手作業は人間が受け持つ。また、画像認識精度はそれほど高くなくてもいい。疑いがあるというアラームがなるだけで人間の見回り範囲が絞れるし、徐々に学習して時間とともに精度が高まれば十分。
その昔、米軍がベトナムで使った枯葉剤を畑にばら撒くような大量生産と効率のみを優先させる農業が、ほんの少しでも変わっていく動きの1つにしていきたい、と割とマジメなことも考えています。僕はオリーブアナアキゾウムシのことは知っているけど、ロボットやAIのことは苦手なので、そこが得意な人、一緒にやっていきませんか。
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文と写真 山田典章
オリーブ専業農家。香川県小豆島の山田オリーブ園園主。1967年佐賀県生まれ。岡山大学農学部を卒業後、会社員時代の約20年間に保育園事業などの6つの事業に携わる。2010年に小豆島に移住し、子どものときに好きだった虫捕りが毎日できる有機オリーブ農家になる。好きなものは虫と本と日本酒。オリーブ栽培としては初の有機JASに認定される。山田オリーブ園ではオリーブや柑橘類の栽培、加工、販売を行う。
著書 これならできるオリーブ栽培 ~有機栽培・自家搾油・直売~
(出版社コメント)
オリーブをうまく育てるには? 経営として成り立たせるには? ~栽培から自家搾油、販売まで著者の経験を詳しく解説!~
手間いらずで儲かる新品目として注目されるオリーブ。しかし、「木が枯れてしまった」「何年たっても実がならない」「オイルの搾り方がよくわからない」といった声も。
本書では、脱サラで新規就農し、日本で初めてオリーブ栽培の有機JASを取得した著者が、確実に実をならせるための栽培のコツや病害虫対策、小規模な自家搾油所の作り方と搾油方法、ネット通販などのノウハウを丁寧に解説。
とくに、日本のオリーブ栽培で最大の難関となるオリーブアナアキゾウムシ対策は必見。昆虫少年だった著者が観察と実験を繰り返して、明らかにしたその生態をもとに、農薬を使わなくても、効率よく確実に被害を防ぐ方法を紹介。
まだ木が小さく実の収量が少ない時期の貴重な収入源になるオリーブ茶の作り方や、苛性ソーダを使わない安全な実のアク抜き法、ワイン漬けなどのおいしい実の加工品の作り方も多数紹介。
これからオリーブを栽培したい人、すでに栽培している人にも、ぜひおすすめの一冊。
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