山田オリーブ園 国内で初めてオリーブの有機栽培に成功しました。

無農薬でハマキムシからオリーブを守る方法(実践編)

1.オリーブの害虫であるハマキムシの中で被害が大きくなるマエアカスカシノメイガ

 
オリーブの葉や実を食べるハマキムシには3種類いるが、その中でも春と秋に大量発生するマエアカスカシノメイガは若木の新芽やオリーブの実を食い荒らす嫌な害虫である。

 
これが幼虫。せっかくオリーブががんばって大きくした実やきれいな新芽をパクパク食べる困りもの。

オリーブの実を食べるハマキムシ

 
これが成虫のハマキガ。パッと見は蝶類と間違いそうになるが、飛び方がトリッキーで基本飛び立ったら徐々に落ちていく。

ハマキガ マエアカスカシノメイガ

 
 
2.幼虫の見つけ方(実践編)

 
1)基本型(先端数枚綴り型)

新芽の葉を数枚綴っている最も典型的な型。虫の発生初期はこの型が多い。極めて見つけやすいのが特徴。

ハマキムシ

 
基本的には葉の先端部分を数枚巻くこの形が最も多く見られる。 
ハマキムシが入っているオリーブの葉

 
 
2)一枚型

葉を一枚だけ丸めて隠れている。丸める深さによるが葉が内側に丸まっているので見つけることは可能。大量発生すると新芽は無くなってしまうので、この型が多くなる。

ハマキムシの見つけ方

 
完全に枯れて丸まっているように見えても中にいることがあるので注意。

ハマキムシの見つけ方

 
 
3)重ね型

葉が重なっているその間に潜んでいる型。ほとんど糸で綴っていないので葉の重なり方だけで見つける。下向きに垂れた枝に多い。虫にしたら綴る労力を省略できるので楽。

ハマキムシの見つけ方

 
 
4)無頼型
そもそも隠れていない。葉の裏にひっそりと張り付いている場合もあれば堂々と這っていることもある。早朝や天気が悪いときに比較的多く見られる。ただし、意識して見つけるのでなく偶然、目にして捕殺するという型。

ハマキムシの見つけ方

 
10メートル先からでも発見できる。無頼すぎだろキミ。

ハマキムシの見つけ方

 

 

 
秋も深くなると、ときおりこんなハマキムシに出会えることがある。

日の出を待つハマキムシ

谷川俊太郎さんの詩「あさ」の一部抜粋。

・・・まぶしい まぶしい まぶしい きょう はじめてのきょう

だれのものでもない ほうせきが いっぱい

はっぱもくきも ねっこまでわらっている ひかりにくすぐられて

もう とりたちはおきている ありもおきている たぶんもぐらも・・・

 
そう、そして僕のオリーブ畑の住人「はまきむし」も起きている。朝日を一杯に浴びて生きていることに感謝している。

春のハマキムシが、こんなに堂々と空中に浮いている姿を見ることはない。

なぜなら天敵のアシナガバチに襲われるから。でも、秋のハマキムシは、こんなにも自由だ。

うらやましい。

 

 
 
5)実入り型

実の商品価値がなくなるのでオリーブ農家にとっては最悪の型。

 
実の中に入っている。

 
糞が多く見つけやすい。最悪なのは複数の実を綴っている場合、つまり実巻き虫状態。無意識に変な声が出てしまう。

オリーブの実を食べるハマキムシ

 
一番悶絶するタイプがこの実巻き型。複数の実が重なる部分に入り込み少しずつ食べている。黒い糞で見つけるが見つけたときは実はアウト。

ハマキムシ 実入り型   

 
 
 

3.成虫の捕まえ方(初期ゴム手袋編)

ハマキムシの捕殺方法は何度か書いてきたが、今日はその成虫である蛾の捕殺方法を紹介したい。

 
マエアカスカシノメイガは昼行性で人間が近づくと逃げる性質があるためコツさえ掴めば捕殺可能である。

 
ちなみに、幼虫であるハマキムシを1匹1匹捕殺するより卵を産む成虫を1匹捕殺するほうが効率的。

 
真っ白なので目で追いやすく1回の飛翔距離が長くても10メートル程度と考えていい。

 
手袋を使ったハマキガの捕殺方法

 

捕殺の裏技十か条

  1. オリーブの見回りをするときは木の葉に触りながら見て回るといい。ハマキガが人間に驚いて飛び出してくる。
  2. 最も捕殺しやすい時間帯は早朝。日の出前後。気温が低いのでハマキガの動きが緩慢で捕殺しやすい。
  3. 飛び出したてきたら視線が切れないように移動しながら次の落ち着き先をしっかり目で追うこと。
  4. 次の落ち着き先が分かったら1回深呼吸すること。すぐに近づくと過敏になっているハマキガが、もう一度飛び立ってしまう。
  5. 地面の下草に隠れたらラッキー。なぜか地面は落ち着くみたい。そおっと近づき足で踏み潰すのと逃げられにくい。踏み潰すアクションは剣道でいうところのすり足からの飛び込み面。剣道の覚えがない人は剣道を習うことから。
  6. 木の葉に止まった場合は、できるだけ静かに近づきハマキガの目とこちらの間に障害物である葉っぱがあるのがベター。直接、目が合うとすぐに逃げるので。
  7. ゴムが付いた手袋をムチのようにしならせて葉っぱごとハマキガをぴしっと打つこと。ゴム手袋の一番長い中指の先っぽあたりを当てるのが最も効果的。ちなみに両手でパチンは、ほとんど失敗する。
  8. ハマキガが葉ではなく大切な実に止まっているときでも躊躇せず打つこと。確かに実が数粒落ちてしまうが何百匹も卵を生む成虫1匹を捕殺する方が総合的に勘案して正しい行動だから。勇気を持って。
  9. 手袋で打っても気絶しているだけなので速やかにトドメを刺すこと。
  10. もし失敗したら、どこがまずかったのか自分の行動を振り返って何かを学ぶこと。

僕は現在、飛び出してきたハマキガを捕殺できる確率は、ほぼ6割。達人への道は、なかなかに険しい。

 
 
 

3.成虫の捕まえ方(道具模索編)

ハマキムシ退治といえば葉を巻いた幼虫を見つけて潰すというのがこれまでやってきた方法。

 
しかし、ひらひらと舞う成虫を確実に捕殺できればもっともっと効率はいいはず。

 
これまでは見回りしながら、ゴム手袋や帽子で枝葉にとまったハマキガと叩き落していたが、人間が攻撃してくる距離に近づくと逃げてしまって、捕殺率6割を超えない。

 
しかし、その逃げる距離は帽子や手袋が届く程度より遠いと逃げないので、もう少し長い道具を使えばなんとかなるかもということで、ハマキガを撃墜する道具をアレコレ試してみることに。

ハマキガを捕殺する道具の数々

 
右から細い鉄線、ロッド、補虫網、バトミントンのラケット。

 
ばんばん撃墜していく。

 
先が細い鉄線やロッドはハマキガを捉えるのが難しくてダメ。

 
網は長すぎて木の枝が邪魔になるのと虫を網の中に入れるのがもう1つ難しいのでダメ。 

 
結果的にバトミントンのラケットが使いやすい。

 
なんだったら飛んでいるハマキガですらスマッシュして叩き落すことができるくらい。

 
畑でラケットを振り回していたら道行く子どもに凝視されるという問題も若干あるが、まあ気にしない。

 
しかし、ラケットも少し弱点がある。網が張ってある面積が広すぎ、かつ枠が固い鉄なのでオリーブの実を一緒に叩き落してしまうことが何度もあった。

 
網の面積がもう少し小さくて固い枠がないような道具があれば最高だろう。

 
なんかそういう道具が既に世の中に存在しているような気がして仕方ない。

 
 
 

4.成虫の捕まえ方(ハマキガタタキ編)

悪さをする幼虫を産みにくる成虫(蛾)を叩き落すのに最適な道具が実験の結果、バトミントンのラケットだった。

 
しかし、ラケットは打つところが広すぎて枠がアルミ製なので実まで落としてしまうという難点がある。

 
そういう難点をクリアーしているデザインのものがアマゾンにあったので買ってみて使ってみた。こういうヤツ。

ハマキガタタキ

 
なんと長さも叩くとのころの大きさも絶妙にいい具合。

 
使ってみるとマエアカ蛾の撃墜率ほぼ100%と信じられないくらいの数字を叩き出す。(28匹中27匹撃墜)

 
アマゾンにはマエアカスカシノメイガタタキまで売っている。

 
ラケットを持って畑をウロウロしているのを見た近所のおじさんに何をしているのかをいちいち説明しなくてもいいのが、更によろしい。

ハエタタキではなくハマキガタタキ

 
アマゾンで購入する場合の商品名は「ハエタタキ」もしくは「ハエポイ」

 

 

文と写真 山田典章

オリーブ専業農家。香川県小豆島の山田オリーブ園園主。1967年佐賀県生まれ。岡山大学農学部を卒業後、会社員時代の約20年間に保育園事業などの6つの事業に携わる。2010年に小豆島に移住し、子どものときに好きだった虫捕りが毎日できる有機オリーブ農家になる。好きなものは虫と本と日本酒。オリーブ栽培としては初の有機JASに認定される。山田オリーブ園ではオリーブや柑橘類の栽培、加工、販売を行う。

 

 

 

 

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