山田オリーブ園 国内で初めてオリーブの有機栽培に成功しました。

オリーブ畑でミツバチと暮らす方法

0.ミツバチと一緒に暮らすためのコツ

1.オリーブ畑とミツバチ

2.ミツバチを飼ってみよう

3.待つだけでは来ないので分蜂群を箱に入れてしまう

4.1年目:ミツバチの暮らしが始まり、そして終わる

5.2年目:キンリョウヘンの花が咲く

6.3年目:大きく育ったキンリョウヘンの花が今年も咲く

7.巣箱を増設する

8.ミツバチを襲うスズメバチ「キイロスズメバチ」

9.二ホンミツバチと死闘を繰り広げる本当の敵「オオスズメバチ」

10.オオスズメバチとの戦いの日々

11.4年目:また春がやってくる

 

 

0.ミツバチと一緒に暮らすためのコツ

この記事は二ホンミツバチと一緒に暮らすことの面白さを知ってもらうために書きました。巣箱を設置してミツバチがやってきては逃げ新しい群れとまた出会ってきた記録です。ミツバチを飼ってみようと思っている人に読んでもらいたいです。

 

後述する体験談とは別に、ミツバチに巣箱に入ってもらうコツがあるので、それだけは先に触れておきます。

 

野鳥が人間が作った巣箱に入るように、ミツバチも運が良ければ巣箱に入ってくれます。

 

しかし庭先や畑に巣箱を置くだけでミツバチが巣箱に入る確率は低いというのが実感です。

 

どうやって確率を上げるのか?

 

その答えはキンリョウヘンという蘭の花を手に入れることです。

 

二ホンミツバチが巣箱に入るためには、巣箱を作り、ミツバチが来やすい場所を探し、巣箱を設置し、場合によって分蜂群ごと一網打尽に捕まえてしまうなどの段取りがあります。

 

しかし、一番大事なのは、巣箱でも場所でもありません。ミツバチが大好きな匂いを振りまくキンリョウヘンの花を巣箱の近くに置くことです。

 

巣箱はネットで買えばいいです。場所は真夏に暑くなりすぎない木陰や軒先があればそこに置くだけです。しかし、最高の巣箱を最適な場所に置いても、よほど運が良くなければミツバチは巣箱を見つけてくれません。

 

ミツバチをゲットする最高のアイテム「キンリョウヘン」の植木を飼って、育てることから始めてください。春になってキンリョウヘンの花の蕾が出るようなら、そこから巣箱を買うなり、作るなりすれば間に合います。

 

ミツバチと一緒に暮らすために、人間がやる最も効果的な手段は、キンリョウヘンを大切に育てること。

 

では以下はこれまでことです。

 

 

1.オリーブ畑とミツバチ

小豆島でオリーブの有機栽培をしている農家です。

 

農薬を使わない島のオリーブ畑には、一年を通して多くの草花が地面を覆います。そして、それらの草花やオリーブの花を目指して沢山のミツバチたちがやってきます。

オリーブ畑のミツバチの巣箱

 

オリーブ畑にやってきたミツバチとの出会いから、巣箱を置いて一緒に暮らすようになるまでの試行錯誤、ミツバチと暮らすことの楽しみ、ミツバチを巣箱に呼ぶコツ、スズメバチの撃退方法など、これまでの体験から学んだことを書いてみます。

 

 

2.ミツバチを飼ってみよう

ミツバチの分蜂

いつものように畑仕事をおしていると、オリーブの枝に昨日まではなかった物体がぶら下がっています。

 

最初はこれが何なのか分からなかった。

 

近づいて見ると、なんと無数のミツバチが塊りが、ブーンと羽音を響かせながら動いている。

 

興味津々でずっと眺めた次の日。

ミツバチの跡

 

急いで畑に行ってみるが、残念ミツバチの塊はもういない。塊りがあったあたりに黄色いミツバチの巣の始まりみたいなものだけが残っていた。

 

いなくなってみると、どんどんミツバチが気になり始める。

 

色々調べると、昨日の塊はミツバチの中でも日本固有の二ホンミツバチの分蜂群だったことなどが分かる。

 

 

ミツバチには養蜂用のセイヨウミツバチと在来種のニホンミツバチがいて、巣箱を設置すれば野生の?二ホンミツバチが住み着いてくれる可能性があるらしい。

 

巣箱の作り方などの情報も載っていましたが、とりあえずネットのショップで2万円くらいの巣箱セットを買ってオリーブ畑に置いてみる。

二ホンミツバチの巣箱

 

 

3.待つだけでは来ないので分蜂群を箱に入れてしまう

オリーブ畑のミツバチの巣箱

巣箱を設置してからミツバチが入ってないかをみに来る毎日。今日はいるか?今日こそきたか?と期待しながら確かめにくるが全く気配ナシ。

 

待てど暮らせどミツバチは来ない。諦めかけたある日、庭の桜に分蜂群がいるのを発見する。待つだけではダメだということで、この分蜂群を巣箱に入れてしまう強硬手段に。ゴム手袋をはめて、ばさっとこそげ落とす感じです。さすがに数匹が怒ったみたいで耳元でブンブン羽音を響かせて威嚇してきたけど、多分女王蜂は巣箱に入ったと思う。

 

 

4.1年目:ミツバチの暮らしが始まり、そして終わる

二ホンミツバチの巣箱

強引に巣箱に入れた分蜂群。新居を気に入ってくれたみたいで、そのまま暮らし始める。仕事の合間を縫っては巣箱の前に座り込み、出たり入ったりするミツバチを眺める。

 

蜜蝋

梅雨頃に巣箱に入ったミツバチたちだったが9月の終わりころ、その姿を見かけなくなる。もう冬眠した訳でもないだろうにと、そっと巣箱を覗くともぬけの殻。ショック。住み心地が悪かったのか理由はよく分からないまま最初の年のミツバチとの暮らしは、突然終わってしまう。

 

蜜蝋とオリーブオイル

置き土産の蜜蝋を使って何かできないかと調べてみると、オリーブオイルと蜜蝋でリップクリームが作れるらしい。ちなみに、うちはオリーブ農家なのでオリーブオイルだけは売るほどある。

 

手づくrのリップクリーム

蜜蝋とオリーブオイルを湯煎しながら掻き混ぜるだけ。本当に全て自家製のリップクリーム第一号が完成する。美味しそう。食べれるけど食べ物ではない。

 

※当時、このブログを見て某社から国産の有機素材だけで作ったリップクリームを作りたいという相談を受け、うちの有機オリーブオイルを使ったリップクリームが商品化されることになる。それは、もう少し先の話し。加えて、この頃から、国産の有機農産物100%の化粧品を自社ブランドで作れたらいいな、みたいなことを考え始める。その後、実現し商品化されるが、それももう少し先の話し。[山田オリーブ園ネットショップ スキンケアオイル]

 

 

5.2年目:キンリョウヘンの花が咲く

キンリョウヘンの花

ミツバチたちが去ってしまった翌年の春、待望のキンリョウヘンの花が咲く。キンリョウヘンの花の匂いがミツバチを集めるらしいということで、1年前に買っていた植木にようやく花が付き、これで今年はミツバチが集まるはず。

 

静かな巣箱

しかし、キンリョウヘンの花が散り、桜も散るがミツバチはやってこなかった。今年もダメか。

 

 

6.3年目:大きく育ったキンリョウヘンの花が今年も咲く

キンリョウヘンの花

ミツバチは来なかったけど、残ったキンリョウヘンを大切に育てたお陰で、翌年の春、大きく育ったキンリョウヘンに沢山の花が咲く。

 

ミツバチの巣箱のキンリョウヘン

ミツバチの分蜂がキンリョウヘンに直接集まると花が痛むらしいので花をネットで守り巣箱の近くにセット完了。ミツバチの巣箱を設置して3年目、今年こそ!ちなみにネットの骨組みは壊れたカメラの三脚に防虫ネットを巻くと絶妙にぴったり。

 

 
それから1週間。ときおりキンリョウヘンの近くでミツバチの羽音を聞く。キンリョウヘンの匂いに誘われて探索蜂がネットの周りをウロウロ飛び回る。しかし本隊に知らせてないのだろうか、ちょくちょくキンリョウヘンをチェックするがやってくる気配なし。早くこないか女王蜂と本体分蜂群。
 
 
更に1週間。ようやくミツバチの数が増え始め、キンリョウヘンの花の香りに興奮状態。巣箱に数匹が出入りを始める。
 
 
眺めていると、キンリョウヘンに集まっていたミツバチたちの数が徐々に減っていく。
 
そして1匹もいなくなる。今年もダメだったか。
 
と次の瞬間、頭上が一瞬暗くなったと同時に無数の羽音。見上げると数千匹のミツバチが空を覆っている。奇跡的な瞬間に声も出ない。
 
 
空を覆っていたミツバチが次々、目の前のキンリョウヘンに下りてくる。やったかも。3年目にしてようやくミツバチ入ったか?
 
 
 

7.巣箱を増設する

ニホンミツバチの巣箱
 
すっかり巣箱での生活に慣れたミツバチたち。最近、巣箱の外にずっとハチがいるので、暑いのか、それとも箱が一杯になったのか?
 
 
巣箱の底板が外れる構造になっているので、板を抜いて、巣箱の中を覗いてみる。結構いっぱいいっぱい。
 
ニホンミツバチの巣箱
 
巣箱をもう一段増やして、箱の中のスペースを広げてやる。
 
二ホンミツバチの巣箱作り
 
ちなみに増設用の底がない四角の木枠はカンタンなので板だけ買ってきて自作する。一応焼きも入れたら完成。
 
二ホンミツバチの巣箱
 
ハチたちの増え方を見ながら必要に応じて巣箱の増設をしていく。
 
 
 

8.ミツバチを襲うスズメバチ「キイロスズメバチ」

 

二ホンミツバチを狩りに来るキイロスズメバチ。巣箱の前でホバリングしながら返ってきたミツバチをバシッとキャッチし地面に一緒に激突。

 

押さえつけて強力な顎でミツバチにとどめを刺しそのまま食料として自分たちの巣に持ち帰る。

 

まあ食物連鎖なので仕方がない。スズメバチもかわいい子たちを食わさないといけないのだ。

 

仕方は無いけど、何とも憎らしいので、暇を見つけてはハエタタキでやってくるスズメバチを叩き落とす。

 

 

9.二ホンミツバチと死闘を繰り広げる本当の敵「オオスズメバチ」

 

ミツバチの本当の天敵はこのオオスズメバチ。オオスズメバチは、キイロスズメバチのようにミツバチを1匹ずつ狩るのではなく、巣箱に穴を空けてミツバチの幼虫や蛹ごと、ごっそり持って帰ろうという大胆な攻撃を仕掛けてくる。カチカチという音はスズメバチが顎で金網を噛む音。

 

強靭な顎で巣箱の木は齧って穴を空けてしまう。

 

 
しかし、ミツバチも負けてはいない。オオスズメバチを沢山のミツバチで抱え込み身体を振動させ熱を上げることでスズメバチを焼き殺そうとする蜂球作戦。
 
二ホンミツバチの蜂球で死んでしまうミツバチ
 
本などの情報ではミツバチの蜂球でスズメバチを焼き殺すと書いてあるのだが、ほとんどの場合はミツバチがスズメバチに殺されて、最後は嫌気がさしたスズメバチが逃げてしまうというパターン。それにしても命を懸けて巣を守るミツバチすごい。
 
 
 

10.オオスズメバチとの戦いの日々

オオスズメバチ対策
 
秋の深まりとともに日に日にオオスズメバチの襲来が激しさを増す。
 
巣箱の入り口部分の木を齧って広げようとするので、ミツバチだけが通過できる7mmサイズの網と頑丈な木材で囲む。
 
かつ、ネズミ捕り用の粘着シートに、生きたままのスズメバチを貼り付けておくことで、やってきたスズメバチを捕まえていく作戦を開始。
 
 
ネズミ捕りシートを使ったスズメバチホイホイの効果は想像以上。粘着液に捕まったまま動く仲間を助けようと、スズメバチが次々やってきては捕まっていく。
 
しかし、巣に近すぎミツバチも捕まり始めたので巣から少し離してスズメバチだけが捕まるようにする。
 
ネズミ捕りに捕まるオオスズメバチ
 
すごい量のスズメバチ。
 
スズメバチホイホイ
 
あまりにも多いので2枚目投入。
 
しかし、そうこうしているうちに一年で一番忙しいオリーブの収穫が始まり、ミツバチと一緒にスズメバチと戦ってやれなくなってきた。
 
ミツバチの巣を襲うオオスズメバチ
 
或る日、ふと巣箱を見ると網の中にスズメバチが侵入している。分厚い木を食い破ってしまった。どんだけパワフル。
 
収穫の合間に補強し、スズメバチホイホイを取り換える。
 
いなくなったミツバチ
 
ある秋の天気の良い日曜日。久しぶりに巣箱を見るとスズメバチホイホイのスズメバチが増えていない。
 
とうとうスズメバチも諦めてくれたかと思ったものの、そういえばミツバチもいない。巣箱を見るともぬけの殻。
 
ショック。
 
3年目、ようやく住み着いてくれたミツバチたち、またどっかに行ってしまった。スズメバチのしつこい攻勢がストレスだったんだろうか。
 
悲しい。
 
 
 

11.4年目:また春がやってくる

キンリョウヘンの花が咲く
 
しかし、キンリョウヘンさえ大切に育てていればチャンスは毎年廻ってくる。
 
今年は更に大きくなったキンリョウヘンに沢山の花が咲く。
 
二ホンミツバチの巣箱
 
ふと気づくと、いつの間にか新しい群れが巣箱の中で暮らし始めている。
 
 
嬉しくなった息子がミツバチが手に乗ってくるのを、ただただ待っている。
 
そして巣箱を設置して4年目、なぜか今年の秋はオオスズメバチの襲来もなく無事に秋を越えて、冬の今、暖かい日だけ出てきては花の蜜を探して行くミツバチたちを眺めている。
 
 
野生のミツバチたちと暮らすことは、自然との接点を増やしてくれるし、何よりミツバチはかわいい。
 
ハチミツを採ることを目的とするのではなく、虫かごの中で飼う虫とは違う野生のミツバチと人間が一緒に暮らすことは、こんなにも面白い。
 
待ちわびたミツバチが空を覆った日の驚きは忘れることがないと思う。
 
 

 

文と写真 山田典章

オリーブ専業農家。香川県小豆島の山田オリーブ園園主。1967年佐賀県生まれ。岡山大学農学部を卒業後、会社員時代の約20年間に保育園事業などの6つの事業に携わる。2010年に小豆島に移住し、子どものときに好きだった虫捕りが毎日できる有機オリーブ農家になる。好きなものは虫と本と日本酒。オリーブ栽培としては初の有機JASに認定される。山田オリーブ園ではオリーブや柑橘類の栽培、加工、販売を行う。

 

 

 

 

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