山田オリーブ園 国内で初めてオリーブの有機栽培に成功しました。

オリーブは楽して儲かる?

今日はオリーブ好き向けではなく、オリーブの果樹農家を目指すような非常に限られた人へ。少し昔の記事への感想を書いてみたい。

 

日本農業新聞|2019.3.21|オリーブ産地 拡大中 東北から九州まで 国際的評価も上昇|

 

★冒頭記事抜粋★

「オリーブの生産が全国で活発になってきた。香川県の小豆島での栽培を発祥に、現在、耕作放棄地や景観対策として東北から九州にまで栽培が広がる。今年に入り初の全国サミットやオイル品評会が相次ぎ開かれ、国産振興の機運が高まる。オリーブオイルの品質は世界でも認められ始め、6次産業化で雇用創出なども期待できる。国内外を視野に各地で高品質オリーブオイル産地としての発展を目指している。」

 

要約すると、柑橘類などに比べると手間が掛からない割に加工品として高値で売れるから全国各地でどんどん栽培が広がっていますよ、ということが本文には書かれている。

 

この記事を読んでいて、(記事の中でも紹介されている)今年の2月に小豆島で開催された「全国オリーブサミット」のことを思い出した。出席者の集まりがイマイチなのか出席してもらえないか役場から電話があったので、とりあえず行ってみた。

 

全国でオリーブの産地化を目指す自治体の首長と役場の関係部署の責任者らしい人たちが前から3分の2、その後ろにメディア関係者、そのまた後ろの椅子席に小豆島と近隣のオリーブ生産者みたいな陣容で、会自体は自治体向けに開催されていた。少なくとも、いちオリーブ農家として聞くと、終始何の話しをしているんだろう?という感じ。オリーブの生産、加工の話しをしているようなのに、スルスルと上滑りする話しに違和感を感じていたのだが、その違和感の正体がこの記事を読んで分かった気がする。

 

あのときに、前からほとんどの席を占めていた自治体の人たちと政治家さんたちは、オリーブの実際の現場のことを知らないし興味もあまりないんだろうから仕方ないなということ。そんな人たちが産地化の旗振りをして、みかん農家やスイカ農家、お茶農家に人たちが、全国でオリーブを植え始めているのだ。

 

全国いろんなところでオリーブ栽培が広がることを反対する気はない。本音は広がっても広がらなくてもどちらでもいい。しかし、実際にオリーブ農家である当事者からすると、記事に出てくるような収穫量やオイルの価格は嘘とまでは言わないけど、相当誇張されているように見える。そんなに儲かるならそりゃみんなオリーブ植えたくなるけど、例えば全国でオリーブ栽培が盛んな小豆島ですら、うちのような個人農家でぎりぎり食えている農家は両手の数ほどもいないし、会社で何とかやっているところは、オリーブ以外の本業で儲けているか、海外のオイルを日本で瓶詰めして売った利益で穴埋めしているか、食用ではなく化粧品のオイルで儲けている。

 

オリーブを振興する役場関係者は、うまくいかなくても数年すれば異動するし、政治家も次々新しい振興策を考えればいいので、オリーブの6次産業化なんかうまくいかなくても困らない。役場関係者を責めているのではなく、そういう役割であり立場の人たちの言うことを、どこまで聞いて信じるかは当事者である農家だと言うこと。オリーブは手間が掛からないからと言われて補助金でお得になったように見える苗木を植えたけど、一向に実が生らないとか、実はなったけどオイルはたいして売れないとかって愚痴ったって、責任は当事者である農家にある。誰も助けてくれないのは当たり前。イケイケドンドンを話半分で聞きながら、それでも自己責任でオリーブを植えたい人しか、多分成功しない。

 

ちなみに小豆島ではここ近年、毎年千人近くの移住者がきて、一部の変わり者たちが農家になったり、塩を作ったり、豚を育てたり、ビールを作ったり、パンを焼いたり、コーヒーを挽いたりと起業してはその多くが失敗する。でも、その人たちは別に役場の人に「塩を作ったら儲かるよ」なんて言われて始めた人はいない。みんな自分で勝手に始めて勝手にうまくいったりうまくいかなかったりしているのだ。

 

当たり前のことだが、楽して儲かるなんて話しは信じちゃいけないというだけのこと。たまたま運よくうまくいくことはある。がんばって成功することもあるし、がんばってもうまくいかないこともある。どちらにせよ他人は責任は取ってくれないから、そのつもりでやってみるしかないよね、話は半分くらいに聞こうよ、うまくいかなかったときの保険は掛けておこうよ、という話し。

 

ちなみに、うちも含めてオリーブで何とか食えている小豆島の農家も来年も続けていられるかどうかは分からない。やれることはやるけど、大きな台風1つで全てがダメになるかもしれないし、小豆島産のオリーブオイルの信頼が揺らぐような何かが起こらないとも限らない。つまり、オリーブにしても、ブドウにしても、野菜にしても、うどん屋にしてもうまくいくかどうかは分からないし、うまくいったとしてもずっとうまくいくかどうかは分からない。

 

宗教は廃れないし、占いの本も売れ続ける訳である。

 

 

 

 

“オリーブは楽して儲かる?” への2件のフィードバック

  1. 興味深く読ませて頂きました。
     耕作放棄地対策は、オリーブオイルでやろうと思い、試験的に何本か植えてみました。
    はなから儲け度外視でやっています。でも木が大きく育つと可愛くなりますね。
     枯れなければなんとかなるだろうか。

    • 儲けを考えていないのであれば育って実が生るかどうかだけだと思います。その土地の気候や畑のポテンシャルによると思いますが、まずは植えてみるところから始めてみるのはいいですね。とは言っても確かに世話をしていると何年もつきあう果樹は愛着が湧いてきます。気長に楽しみながらオリーブ栽培楽しんでみてください。

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