島暮らしの日常
玄関先の桜そろそろ8分咲きで、ミツバチの羽音が聞こえ始める。
島流し、という言葉がある。
罪を犯した人への刑罰として島に流して閉じ込めてしまえ、とまあそんなことだろうとは思うが、島に住む人間としては複雑な言葉。
都会は便利である。遊べるところも沢山ある。美味しい食べ物もある。お酒を飲んでも電車で帰れる。人間の距離感も適度で自由もある。面白くて給料が沢山もらえる仕事だってある。都会には都会の良さがあり、僕はそんな都会が好きだったけど、オリーブ農家という仕事を選んで島で暮らしている。
しかし、今のようなことになると島暮らしも悪くないと思う。というもの、畑に行くと、周りの畑には必ずそれぞれの畑の持ち主であるご老人たちが、せっせと畑仕事をしている。何せ春の今の季節は、やること満載なのだ。せっせせっせと土を耕し、肥料をやり、種を蒔かなくてはならない。一日中、家でぼんやりテレビを観ている場合ではない。これから、もし島でも外出禁止とかなっても島の老人たちは毎日、畑に出かけてゆき、土をいじり、汗を掻き、自分で育てた野菜を食べ、ぐっすり眠る。
医療機関が貧弱な離島は、都会のように何かあっても助けてもらえないかもしれない。それもまた運命、そしてそれを自然と受け入れているそんな老人たちに交じって畑仕事をしているうちに、僕もその一人になることが嬉しくなっている。
島暮らし、何もないようだけど本当に必要なものは足りている。
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