ついに蟻地獄を捕まえる
ゾウムシの幼虫を捕まえるためにオリーブの根元を掘っていたところ、土の中から何かの虫が出てきた。土の中には色んな虫がいるので特に気にしていなかったのだが、よくよく見ると何と!アリジゴク。
アリジゴクとはウスバカゲロウの幼虫で蟻地獄と書く。砂地にすり鉢状の穴を掘りその底で蟻が落ち来るのを待ち、すり鉢に入ってきたら砂を掛けて蟻を穴の底に落とし、鋭い顎で捕まえ食べてしまうという虫。
僕は子どもの頃、この虫を昆虫図鑑で見たときのショックを未だに覚えている。虫なのに罠を作り、土の中に潜み、最後は砂掛け婆みたいに砂で蟻を打ち落とす。しかも、その名前が蟻地獄という。地獄という言葉を付けられた生き物なんて他には存在しない。
それ以降、僕はすり鉢状の穴があるところにいくとこのアリジゴクばかり探していた時期があった。しかし、ほとんどは雨どいから雫が落ちて凹地のようなところばかりで、とうとうアリジゴクを見つけることができないまま大人になってしまい、終いにはアリジゴクを捕まえたいというそのこと自体を忘れていた。
オリーブ畑でアリジゴクを捕まえた瞬間に、小学校へ集団登校する砂場で、いつもアリジゴクを探していた風景がパッと浮かぶ。ネコの糞と鉄棒の匂いがする砂場の匂いとコンビナートから漂うゴムが焼けるような匂い。穴を探して下を見ると半ズボンの下の膝小僧はいつもカサカサで白く粉が吹いていた。
夢は叶う。
こういうのを夢と言うなら。
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