山田オリーブ園 国内で初めてオリーブの有機栽培に成功しました。

「オリーブの根元を覆う最適な素材を試す」オリーブアナアキゾウムシ生態実験

1.飼育箱のゾウムシが木に産卵しにくい素材は何か?

 

飼育箱のゾウムシが石灰より嫌う素材決定戦をやってみることにする。候補は石灰含めて3つ。

 
左から石灰・塩化ビニール(商品名;キマモール)・アルミニウム箔の3つ。

オリーブアナアキゾウムシの産卵防止素材実験

 
せっかくなので予想してみる。

 
ゾウムシになったつもりで採点。嫌いなほど点数は高く最高3点。

    石灰  ビニル アルミ
見た目 2点  1点  3点
臭い  2点  2点  1点
感触  1点  2点  3点
硬度  1点  1点  3点
計   6点  6点  10点

ということで、予想は、アルミが一番嫌いで石灰と塩化ビニールは同じくらいかな。

 

ゾウムシが忌避する素材を飼育箱で実験している途中だが、新しい事実が判明する。

オリーブアナアキゾウムシの産卵防止素材実験

 
カミキリムシが卵を産み付けなくなる「キマモール」という商品の使用は有機JASでは認められない可能性が高いということを認定機関から教えてもらう。

 
化学合成物である素材が長年使用すると劣化して土に混ざる可能性があるので不可とのこと。

 
「キマモール」の販売業者には事前にメールで問い合わせしたところ、有機JAS使用素材として問題ないとの返答をもらっていたが残念。

 
それから、もうひとつ石灰も有機栽培ではNG。有機JASで使用できる石灰はあるが、それは肥料としてしか使用できず、いわゆる害虫の忌避剤つまり農薬としては使ってはいけないということらしい。なんだか分かるようで分からない理由だけど、これが現時点の有機JAS制度の限界。農水省も実際は有機栽培を広げていこうという意思は気薄だし、日本の農業の衰退を指を咥えて眺めているだけの省庁に期待する方が間抜けだろう。うまく、利用するのみ。ちなみに、同様に忌避剤として使用を検討したが有機JAS制度では木酢液や唐辛子を溶かす焼酎などもアウト。脱線ついでに言うと、現場に近い例えば町役場の農林水産課などは農家の現場に対する意識は高い。親や知り合いが農家みたいな日常での感覚の近さが感じられる。これが県や国みたいに離れると離れるほど農業の実際から離れていく。大学の農学部で勉強だけして農水省に入った本省のキャリアみたいな人間が、実は一番農業を理解していないこの国の悲哀。まあ、現場が分かっていない連中にがんばられると混乱するだけなので、それほど問題なし。

 
実験に戻る。

 
使えない素材が多いことが分かったので使える素材を畑に投入してみよう。

 
 
2.アルミ箔で木の根元を覆ってみる実験

 
本題 今年度のテーマの1つが「捕殺以外の農薬を使わない防虫技術を見つける」こと。

 
 その方法論を見つけるときの考え方を整理しておく。

 
スミチオンのように100%防除する方法論を見つけるのではなくて、オリーブアナアキゾウムシの幼虫が木の幹を食い荒らすのを何割か減らす方法論を探していくというのがポイント。

 
つまりスミチオンという10割バッターの替わりを探すのでなく、3割バッターを何人か見つけて、確実に点を稼ぎに行くという考え方。

 
例えが分かりにくいので、そのままを書くと。 何もしないと毎年20%の木が、ゾウムシの幼虫に食われて枯れるとする。(20%かどうかは分からないが) 100本の木があれば20本が枯れる。

 
1)捕殺で50%の加害を防除する。100本のうち10本は守れるが10本は枯れる。

 
2)芝生で30%の加害が防除できたとする。でも6本は枯れる。

 
3)新しい方法で30%の加害が防除できたとする。4本は枯れる。

 
4)もう1つ30%の防除で3本は枯れる。 3本は、オリーブゾウムシがいる日本でオリーブを育てているので、あきらめる。

 
という考え方。 つまり、3割バッターを探すのが今年から始まる実験のテーマ。さあ、思いついた順に、どんどん行きましょう。 第一弾は、ゾウムシが卵を産み付ける確率が高いと言われる木の根元に、アルミホイルを巻く。物理的で分かりやすい方法から、始めてみる。

オリーブアナアキゾウムシ産卵防止素材 アルミ箔

ここに載せたので、少々ややこしいことがあるかもしれないけど、最初に宣言しておきたい。 強い農薬を使わないことで島の環境負荷を少しでも軽減させる可能性を模索しているということ。 評論家より具体的に行動する人間でいたいということ。

 

アルミ箔を巻いたオリーブの木を飼育箱に投入して約1ヶ月。全くの無傷。ゾウムシはアルミ箔が巻かれた物体を木として認識していないと思われる。とすればゾウムシからオリーブの木を守る素材としては完璧かと思い始めていた。

オリーブアナアキゾウムシ産卵防止素材 アルミ箔

 
アルミ箔を巻いて3カ月後。状況確認のため剥がしてみる。つまり、日ごろは見ないところも全てチェックして絶句。アルミ箔が巻かれている下からオガクズ。

オリーブアナアキゾウムシ産卵防止素材 アルミ箔実験結果

 
アルミ箔をよく見るとゾウムシの幼虫が木を食った跡が残っている。

オリーブアナアキゾウムシ産卵防止素材 アルミ箔実験結果

 
くぬやろー!いた。始めて実物を見た。これがオリーブアナアキゾウムシの幼虫。計三匹もいた。

オリーブアナアキゾウムシの幼虫

 
アルミ箔の際に卵を産みつけて幼虫が下に潜り込んでいた模様。

 
アルミ箔に隠れてオガクズの発見が遅れてしまった。 うーむ。アルミ箔フィールドテストで弱点を晒すの巻。 大失敗。

 
 
3.サランラップで木の根元を覆ってみる実験

 
木の根元に巻くことでオリーブゾウムシの産卵を防ぐ素材を見つけるための実験を飼育箱と畑で繰り返している。これまで3つの素材を試した。 ビニール樹脂のキマモールは飼育箱でゾウムシの産卵を防げなかった。 石灰も数日すると剥がれてしまいメンテナンスが難しい。 アルミ箔は飼育箱では完璧だったが畑では隙間に卵を産み付けられアルミ箔の裏に潜り込まれて発見がおくれてしまった。

 
ということで4つめの素材、クレラップ(サランラップともいう)を畑で試してみる。

 
ちなみに飼育箱では1ヵ月半が経過しても無傷の実績がある。

オリーブアナアキゾウムシの産卵防止素材実験 サランラップ

 
風雨への耐久性、それからビニールハウス化して温度や湿度が上がりすぎる可能性、地際の耐性などなど実際のフィールドで試してみる。

 
ゾウムシの産卵から木を守る素材としてクレラップを木の根元に巻いて1ヶ月が経過した。防虫効果と防虫素材としての課題を検証するため剥がしてみる。

オリーブアナアキゾウムシの産卵防止素材実験 サランラップ

 
樹皮が剥がれてブヨブヨになっている。クレラップの中が水蒸気と熱で蒸れて樹皮にダメージを与えていた。

オリーブアナアキゾウムシの産卵防止素材実験 サランラップ実験結果

 
この素材は防虫効果はあるかもしれないが木に対してのダメージが大きいので使えないことが分かった。

 
 
3.キラキラ光る素材でゾウムシを防ぐというのはどうだ?

 
これまで試してきた×キマモール×アルミ箔×石灰そして×クレラップもダメ。

 
木を物理的にがっちりガードするのではなく、ゾウムシの視覚に訴えかけてみようということでコレを買ってきた。

 
スパンコールを思いついた人が誰だか知らないけど、スパンコールがオリーブに巻かれることは予想しなかったろうな。

オリーブアナアキゾウムシの産卵防止素材実験 スパンコール

 
ゾウムシ、逆にこういうキラキラしたのが好きだったらそれはそれで面白い気もする。

 
結果は如何に?

 
今朝の見回りで妙見山の畑でオガグズ発見。

 
スパンコールでは防虫効果はない。ゾウムシの幼虫が入っているはず。がっかり、というか当たり前か。    

オリーブアナアキゾウムシの産卵防止素材実験 スパンコール実験結果 

 
これで今年になって卵を産みつけられた木は5本目。

 
幼虫に木の周りをぐるっと食い荒らされると木が水を上げることができなくなり木が弱り、場合によっては枯れてしまう。

 
何にせよ幼虫がいるオガグズのサインを見つけたら駆除しなくてはならない。

 
通常の駆除の仕方は、ドライバー等で食害された部分を削り取ってからスミチオン(農薬)を流しかけて殺すという方法が一般的。もちろん、僕はスミチオンを使わないので違う方法を見つけなくてはならない。 木や虫などの自然物を相手にしていて重要なのは、目に見える物理的な方法こそが最善だということ。つまり、徹底的にドライバーで食害された部分を掻きだし幼虫を見つける方法こそ効果的なのかも。    

オリーブアナアキゾウムシの捕獲 

 
毎日声を掛けて大切に育てた木をドライバーで削るというのは非常にしんどい。

 
ついつい、少しでも削る量を少なく済ましたいと思うのだが、5本を削ってきて、それが間違いであることが経験的に分かった。

 
躊躇して甘く削ると殺し損ねた生き残りが、更に木を食い荒らすことになる。

 
徹底的にドライバーで食害されて茶色に変色した木屑部分を掘り進めて行く。結果、2匹目を発見。

オリーブアナアキゾウムシの捕獲 

 
更に掘り進めて3匹目までをほじくりだして殺す。

 
木の周りをきれいに掃除をして、明日以降オガグズが出てこないかチェックを厳しくする。

 

地面に這いつくばって見逃しがないように辛抱強く何よりも大切な木を削るこの作業は非常にしんどい。

 
でも、あらゆる生き物を殺してしまうスミチオンを使わないというのはこういんしんどさを享受するということ。

 
わずかなオガグズのサインを見逃さず少しでも早く幼虫を目で見て殺すことが僕の最も大切な仕事の1つ。

 
結論

キマモール、アルミ箔、石灰、クレラップ、スパンコールなど物理的に木の根元を覆って木を守ることはできなかった。

 

 

 
【この記事が書かれた2011年から7年後の2018年に追記】

 
2011年はオリーブ栽培を始めて2年目の年。ゾウムシを防ぐために試行錯誤するのだが、何をやってもうまくいかず、収入もない暗中模索の時期だったと思う。

 
「地面に這いつくばって・・辛抱強く」とかこれは完全に泣き言。我ながらみっともない。

 
しかし、最後に書いてある「サインを見逃さず早く幼虫を目で見て殺すことが最も大切な仕事」は今に至ってもそのまま通用する大切な気づきとなっている。

 
ちなみに2018年の今はもっと楽に同じ幼虫を捕まえている。

 
例えば、この写真ではプラスドライバーと使っているが、ゾウムシの幼虫を捕りやすいのは細めのマイナスドライバーと太めのマイナスドライバーを使い分けることであったり、地面に這いつくばらずヨガマットを敷いて快適にのんびり丁寧にゾウムシが木をどの方向に食い進んでいったのか推理しながら捕獲している。

 
その後、トラップなどの試行錯誤もしたが現時点でも「目で見て手で捕る」を超える方法は見つけていない。(2018年8月31日追記)

 

 

 

“「オリーブの根元を覆う最適な素材を試す」オリーブアナアキゾウムシ生態実験” への14件のフィードバック

  1. オリーブアナアキゾウムシで検索していてこのページに出会いました。
    庭のオリーブに「こげら」が来て盛んに木の下のほうを突いていたのでよく見たら
    木くずのようなものが土の上に落ちていました。
    調べてみたらオリーブアナアキソウムシの成虫が3匹
    穴を探ったら幼虫が出てきて捕獲、全部退治できそうもないので
    その後穴にオリーブオイルを注入して様子を見ています。
    昨日蛹の白い半透明の袋のようなものがあって
    瀕死の成虫が2匹つかまりました。
    オリーブオイルが体にまとわりつくと弱るのかなと思っています。

  2. 我が家のオリーブもオリーブアナアキゾウムシにやられ、こちらのページを参考にさせていただき、幼虫を駆除しました。 (シジュウカラのゴハンになったようです)
    その結果、直径5cm程の木の根元から10cm位、ひと回り樹皮が無い状態になってしまいました!
    この後、ここの部分を保護するにはどうしたら良いのでしょうか?
    最近の雨続きで、かなり湿気ている状態なので覆ってしまうのも心配です。

    • 何かで覆うと、またゾウムシの幼虫が入った場合に発見が遅れるので、何かで覆うのは止めた方がいいです。木が若いので水をそのまま乾燥させて気長に復活するのを待ってみてはいかがでしょう。剪定の切り口などに塗る薬品もありますが、うちでは薬は使わないので効果の程は分かりませんが、選択肢としては考えられます。

  3. うちも、オリーブの木が元気無く、よく見たら成虫のゾウムシが。ヤバイと思って根元を探索したのですが、明らかな穴は有りませんでした。けど、ゾウムシがいた、根元から約1m程上にあなが。大きさ的にでた穴と思われました。根元から大抵5cmほどのところに穴をあけるのが一般的の様なので、正直驚きました。ここのサイトにあるように、ドライバーでほじったところ、幼虫一匹を駆除しました。うちもオリーブの木が10本ほどあり、過去に2本ほど枯らせました。すいません、前置き長くて。
    全周剥けると厳しいかもしれません。うちも一本はその状態で枯れました。水を送る導管が全て破壊されている可能性が高いからです。うちでは、半周ぐらいやられた木は大丈夫でした。ドライバーで開けた穴は穴は癒合剤で、塞ぎました。参考になれば幸いです。山田様、横から失礼しました。

  4. サランラップやクレラップの素材は、塩化ビニリデンというポリマーです。この素材で作った蚊帳があります。
    蚊帳なら蒸れなく、有効と思われますが。

    • ご提案ありがとうございます。ゾウムシの口吻が届かないようにスペースを空けて株元に蚊帳のようなネットを設置する方法は有効だと思います。バラの株元にカミキリムシ対策としてうちでもネット使っています。オリーブでも試したのですがネットの素材がどうしても株元を見えにくくしてしまうのと、草刈りが大変になったので途中であきらめてしまいました。でも、すっきりとした見えにくい材質の蚊帳で、草刈りの手間が解消できれば使えるかもしれません。良さそうな材質のネット意識して探してみます。

  5. 開けた穴ですが、やはり癒合剤で塞がないとまずいですかね?まだ中に虫がいるのかも分からんな〜と思い、塞げないでいました。

    • うちでは癒合剤使ったことないですが、それで木が弱るということは今のところないです。まだ幼虫が潜んでいるかもしれないということだったら尚更そのままがいいですよ。

  6. はじめまして。ネグンドカエデとバラの幹がやられ、テッポウムシとは違うと、調べていてこちらにたどり着きました。。そういえば 見たことのない虫がカエデの近くにいたなと思いだしました。写真を見てオリーブゾウムシだと思いました。オリーブの鉢植えが近くにあるので、明日、よく探してみます。バラを無農薬で育てている梶みゆきさんがオリーブゾウムシの頑丈さを憎々しげに話していた様子も思いだしました。
    庭にヤマガラが営巣しているので スミチオン50倍などという恐ろしいものは 撒きたくありません。
    色々と実験してくださってありがとうございます。ヨガマットも使えますね。塀の近くで、鏡を使って幹の裏側を無理な体制で削っていたら 腰が痛いです。穴も成虫も見つかりませんでしたが、らせん状に幹が削られてます。 
    オリーブオイルも使ってみます。明日頑張ってみます。ネットも巻いてみようと思います。
    ありがとうございます。

    • オリーブアナアキゾウムシはモクセイ科の木しか食害しないのでカエデとバラは違う虫かもしれません。らせん状に幹が削られているという状態が何かヒントになるかもしれません。コウモリガとかでしたら食害した幹に綿状のオガクズが残っているのですが。

  7. 昨日の夕方初めてオリーブの木に穴が開いているのに気づきました。
    今日改めて見てみると、びっくりするくらい沢山の穴が開いていました。少なくとも穴は30個以上ありそうです。根元を見てみると、穴とおがくずのようなものがありました。また成虫も10匹以上見つけて捕獲しました。穴は木の手前側だけでなく、側面にも裏側にもあります。
    また、穴の位置は根元だけでなく1.5m以上の高さの所にも開いており、成虫も結構高い場所にいました。オリーブの樹高は約5〜6mくらいです。少し元気がない感じもしますが、弱っているという感じはしません。根元から新しい枝も出てきていますが、雨で作業が進まず焦っています。
    こんなに沢山穴が出来てしまっていたら、もう枯れてしまう可能性が高いでしょうか。
    10年前に家のシンボルツリーとして植え、薬品を使わず剪定だけでこれまで元気に育ってきました。
    まさかこんな虫がいるとは知らず、ショックで残念でなりません。
    雨が止んだら、駄目元で書いてらっしゃるようにマイナスドライバーを使ってやってみようと思います。
    幼虫を見つけるために、穴が開いているところは全て削った方が良いのでしょうか。それとも穴とおがくずの様なものがあるところだけ削れば良いのでしょうか。
    何とか出来ることは全てやってみたいと思います。
    教えて頂けると有難いです。

  8. 群馬の秘境で、耕作放棄地対策としてオリーブの栽培を目指している69歳のジジイです。
     最近まで、このあたり一帯は養蚕が盛んで、カイコの餌となる桑が見渡す限り青々と繁っていました。
    今では、桑も全て引き抜かれコンニャク畑へ変わっています。
     植樹して
    3年くらいが経ちますが、次々に枯れ始めたため、桑の根の病気である紋羽病対策としてロブラールを撒いたところ、枯れが止まりました。
     農地の雑草対策として、高麗芝で管理しようとして除草剤も使いましたので、その影響もあるようですが、よく分かりません。
    植えたときよりも小さい木もありますが、大きいものは2〜3mです。
    中には、木が枯れて根元から出直っているものも数本です。
    6月にスミチオン50倍液を散布しましたが、まだオリーブ穴あきゾウムシは見ていません。もしかしたらいるのかも知れませんね。

    • オリーブアナアキゾウムシの幼虫によって木が枯れる場合、必ず木の根元にオガクズ状の糞が散見されるようになり最終的には1cm弱の羽化した成虫が出てきた穴が空きます。そのような状態でなければ理由は分かりませんが違う理由で枯れていると思います。

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