悲しい青い船
ブルーラインの新しい船を見かける。この新しい船を買って、元々使っていた船が売れなくなったことも、このフェリー会社が身売りした理由の1つらしい。そんなこんなで、僕たち家族の最寄りの港であった草壁港と高松港を結ぶ航路が、来年の3月末にはなくなるらしい。
地元の人たちがこのことを、どうとらえているのか僕は知らない。何とも思っていないのか、諦めているのか、嘆いているのか、怒っているのか。
ただ、ニュースの記事(https://www.sanyonews.jp/article/1051015)を読んで、コロナの影響で資金繰りが悪化し、両備グループに吸収合併され、草壁港のフェリーがなくなった、と当たり前の流れのように書かれた記事には違和感を覚える。
最近は、とりあえずコロナのせいにすれば、何となく深く追及されることもなく、皆納得せざるをえないけど、短期的にはフェリー会社の長年に亘る経営判断の失敗が身売りの直接的な原因であり、長期的には、経営者が間違った判断をしなくても、島の人口減という絶対的な利用者減により、どちらにせよ廃線に追い込まれたのだろうと思う。
来年の4月になれば、少し遠い隣の池田港から高松に行けばいいだけのことなのかもしれない。しかし、これから更に島の人口は減っていく。草壁港の次に無くなるのはどこの港だろうか。
離島というか田舎で暮らすと分かることがある。人は便利なところで暮らし、不便なところからは離れていく。コロナのこともあって東京離れみたいなことが言われるが、そんな流行りは、落ち着けば徐々に元も戻って、若者たちはまた都会を目指す。窮屈で不便な田舎に老人が取り残され、時間とともに徐々に消えていく。
情緒的な田舎ならでは人の温かさや、海や山の自然の美しさだけを語るテレビ番組は、都会で暮らすサラリーマンに、ひとときの幻想を与えるためのエンターテーメントにすぎない。田舎で不便を楽しむ自給自足家族を眺めるのは楽しいが、自分はできるか。
毎日の買い物、教育、医療、電気ガス水道などのライフラインが先細っていく離島の現実として、まずは最寄りの港が無くなる。不便は人の暮らしを壊して人口を減らし、人口が減るとライフラインが損なわれていく、という衰退の連鎖。
土地に依存している農家という職業を選んでいるけども、藤原新也氏の「ニンゲンは犬に食われるほど自由だ」東京漂流の一節とガンジス川の畔で野良犬に食われる人間の骸の写真を思い出す。
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