2020蝉の初鳴き
搾油所にて。
昼寝から目が覚めると蝉の初鳴き。
蝉の鳴き声のせいだろうか、目が覚める前、小学校の夏休みに昼寝から目が覚めたときの記憶が甦る。プールから帰ってきて疲れて寝てしまい目が覚めたら家には誰もいなくて、寝ぼけてランドセルを背負って、社宅の階段を下っているときに母親と鉢合わせをする。どこに行くのかと聞かれたから「学校」と答えると、コロコロ笑う母。実際にあった昔の記憶が甦ってきて、社宅の階段の踊り場に描いてあった落書きや夕方のアスファルトの匂いや若い母の表情が思い出される。
昨日のことですら忘れてしまうのに、40年以上も前の記憶がこんなに鮮明に思い出される不思議。先日、書いたシルバーゾウムシの脳の働きを調べているときに映像記憶というものがあるという解説を読んだ。幼少期にはパッと見たことを映像として克明に記憶するが、成長に従って、その脳の機能が徐々に消失していくらしい。まれに、その映像記憶を持ったまま大人になる人もいるそうで、例えば画家の山下清氏が有名とのこと。見た映像をそのまま細部まで全部記憶する能力。
もしかすると、あの夏休みの頃までは僕にも映像記憶の能力が残っていたのかもしれない。
四日市の梅が丘という社宅はなくなってしまったらしいし、年老いた母ともだいぶ会っていないし、僕もこんなところで昼寝している。ずっと終わらない気がしていた夏休みは、遥か昔に終わってしまって、もうあの頃に戻ることはないし、100年後には梅が丘も母も僕も跡形もなく消えてしまっているだろうけど、この小豆島の寒霞渓の麓では、同じように蝉が鳴くだろう。
2020年6月27日14頃 小豆島の搾油所にて蝉の初鳴きを聴く。
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