虫ばかり探していた。
学校が終わったら虫ばかり探していた。学校でも虫のことばかり考えていた。
サッカーも野球もスーパーカーもインベーダーゲームもピンクレディーも興味がなかった。
虫と夏休みのプールだけが好きだった。
大人になると虫ばかり探している訳にはいかないと教えられた。
普通に会社で働いて虫のことを忘れていた。
でも40歳になる頃、本屋で再会した藤原信也さんのメメントモリ「人間は犬に食われるほど自由だ」を読んだ瞬間、なぜか虫のことを思い出す。
どうしても死ぬ前に、もう一度虫ばかり探していたい。
虫ばかり探すのが今の僕の仕事だ。